佐々木靖人(ささき・やすと)/米国の大学を卒業後、ヘッジファンドなどを経て2016年にレオス・キャピタルワークス入社。22年から「ひふみ投信」シリーズのファンドマネージャー(写真:本人提供)
佐々木靖人(ささき・やすと)/米国の大学を卒業後、ヘッジファンドなどを経て2016年にレオス・キャピタルワークス入社。22年から「ひふみ投信」シリーズのファンドマネージャー(写真:本人提供)

 投資に興味を持ったら、どんな本を読めばよいのだろうか。AERA 2022年5月2-9日合併号の特集「今読みたい本120冊」では、各ジャンルの専門家がおすすめの本を10冊ずつ紹介。その中から、「ひふみ投信」ファンドマネージャー・佐々木靖人さんが選んだ「マネー・経済・社会」分野の本をお届けする。

【佐々木靖人さんオススメの10冊はこちら】



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 私は大学で金融を学んでこの世界に入りました。授業は難しく、学生時代には特にたくさんの本に目を通していました。本を読むことで自分の考えが広がると感じていたし、ひとつ上の視点から自分を観察できるようになる。今の私にとっても本は立ち返る場所をくれるものです。

 今回挙げた10冊は必ずしも経済・マネーに直接関係するものばかりではありません。それでも、この分野を学びたいと思う方にぜひお薦めしたいです。

『知ってそうで知らなかった ほんとうの株のしくみ』は、株式投資に欠かせない企業価値評価を簡単にできるようにする本です。学生時代に著者の山口揚平さんが書いた同じ内容の本(絶版)を読んで感動し、彼にメールを書いて新卒で彼の会社に入社しました。山口さんの考え方は投資家としての私のベースになっています。株式投資を1年くらい経験した方なら、目からうろこがたくさん落ちるはず。

『まぐれ』は投資に勝つとそれを実力だと勘違いし、負けても運が悪かったと思ってしまう人間の心理をとがめてくれる本。口うるさい運用者のエッセーですが、投資で浮かれないために必要なことが書かれています。『狂気とバブル』は170年ほど前に書かれたオムニバスで、オランダ黄金時代の「チューリップ・バブル」や中世の魔女狩りなど狂気がなぜ起きたのか、どんな状況だったのかをまとめています。現代に通じる部分もたくさんあって、「あのころはどうだったんだろう」と辞書的な使い方もおもしろいですね。

 これから投資を始める人にぜひ読んでほしいのが、主に米国の常勝ファンドや優秀なトレーダーへのインタビュー集『マーケットの魔術師』。圧倒されますが、市場にはこんな人たちがいるのかと思うと自然と慎重になるはずです。『相場サイクルの見分け方』は、相場の教科書的な本で、全体像を理解するのに最適でしょう。

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