メイフィールドを襲った竜巻で、大きく損壊した住宅と乗用車/12月12日
メイフィールドを襲った竜巻で、大きく損壊した住宅と乗用車/12月12日

 12月10日夜、アメリカのケンタッキー州などを襲った大規模な竜巻。中でも被害が大きかったのはケンタッキー州の西側で、メイフィールドという人口約1万人の町では、会社などが集まる中心部が破壊された。今回被災したのは、これまで竜巻が頻発してきた地域とは異なるという。気候変動などの影響はあるのか。AERA 2021年12月27日号から。

【写真】メイフィールドにあった弁護士事務所は竜巻で壁などが全て吹っ飛んだ

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 今回の竜巻は長時間にわたって移動し続けたことで、被災地域が「線」として延びた。ケンタッキー州当局の推定によると、最大の竜巻は州内だけで350キロ以上を移動した。米国立気象局(NWS)も15日、「少なくとも260キロ移動し、最大瞬間風速は時速約305キロ」という推定を発表した。16日現在で、州内の死者は75人確認され、16人が安否不明となっている。

■季節外れの気温が原因

 メイフィールドから北東に約90キロ離れた、ドーソンスプリングスという小さな町では15日までに、14人の死亡が確認された。こちらはメイフィールドと異なり、住宅が並ぶエリアを竜巻が直撃した。

 町の人口は約2500人で、ほとんどの人がお互いを知っている。自宅が大きく損壊したティム・クリークマーさん(57)は妻と一緒に地下室に避難をして無事だったが、近くの住宅では3人が亡くなり、少し離れた場所では知人2人も犠牲となった。

「多くの人が一緒に働き、知り合いだ。竜巻の通過で、影響を受けない人はいない」

 これほど大きな竜巻となったのは、季節外れの暖かさなどが原因だったとされる。NWSによると、ケンタッキー州に隣接するテネシー州メンフィスでは10日、約26度の最高気温を観測し、同日の記録を103年ぶりに更新した。そこに、冷たい空気が入り込んだことで積乱雲が発生し、竜巻が起こりやすい気象条件がそろった。

 AP通信によると、竜巻は上昇気流のエネルギーがなくなれば、数分で消えることも多い。しかし、今回は発生源の嵐が強い風速を伴って移動していたため、数時間にわたって続いたとみられる。

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