■偏差値と収入の関係

 こうした学歴フィルターが生まれた背景には、エントリーシートと就職ナビの普及で「誰でも何社でも受けられる」状況があるという。簡単に一括エントリーが可能になった結果、異常な高倍率の企業が出てきた。採用の効率化のため、フィルタリングが行われるというわけだ。

 福島さんによれば、「今年はこの辺の層を中心に何人ぐらい採用しよう」というターゲット校の設定は多くの企業が掲げているという。それ自体は否定されるものではなく、あくまで「フィルタリング」して「排除する」ことが問題だ、と福島さんは指摘する。

 学歴フィルターというものが「シグナリング理論に基づいている」と説明するのは、教育経済学者で慶應義塾大学教授の中室牧子さんだ。

 シグナリング理論とは、企業が労働者の能力を正確に知ることができない「情報の非対称性」の下、企業は「労働者がどの大学を卒業したか」という「シグナル」で労働者の能力を判断するというものだ。

 高卒より大卒、大卒より大学院卒のほうが得られる賃金の上乗せがあることがはっきりしている一方で、近年の研究では、大学の偏差値と将来の収入の間には因果関係がないと結論付けているもののほうが多いという。

「さらに、どこの大学に行くかは実はそんなに大事ではなく、どの学部を出たかが将来の賃金に影響すること、認知能力よりもコミュニケーション力などの非認知能力が賃金に与える影響のほうが2.5~4倍大きいことを示した研究もあります」(中室さん)

 家庭の経済状況などで誰もが高学歴を目指せるわけではない以上、「勉強していい大学に入れば」と切り捨てていいものではない。大学群のくくり分けについて再考すべきだろう。(編集部・高橋有紀)

AERA 2021年12月20日号

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