「東京は沈まないでしょ」。どこかでそう思ってしまう。ドラマ「日本沈没」が話題だが、実際に沈む、沈まないにかかわらず、人口と首都機能が集中する東京に「温暖化」の脅威が迫っているのは否定できない。AERA 2021年11月29日号の特集「日本沈没を検証する」から。
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「私ではなく、関東圏に住む国民の命乞いに参りました」
10月にスタートした俳優の小栗旬さん主演のドラマ「日本沈没─希望のひと─」(TBS系)が、彼のこんなセリフとともに盛り上がりを見せている。SF作家の小松左京氏が1973年に刊行した名作『日本沈没』を大きくアレンジしたもので、「地球温暖化」がカギとなっている。ドラマでは日本沈没に先立ち東京都など関東の一部が沈没した。
今、人類はかつて経験したことのない環境変化の只中にいる。
8月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、世界に衝撃を与えた。
相次ぐ豪雨災害の原因
世界の平均気温は、二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの影響で18世紀後半の産業革命以前と比べ1.09度上昇していると指摘。人間が地球を温暖化させてきたことは、「疑う余地がない」と断言した。そして、このまま温室効果ガスの排出が進めば、今後20年以内に1.5度上昇する可能性があると警鐘を鳴らしたのだ。
温暖化は、地球全体の気候システムに影響を与える。熱波が襲い、大地が干上がり、大雨による洪水が繰り返される。
日本はすでに豪雨災害が相次いでいる。気象庁によれば「滝のように降る」とされる1時間に50ミリ以上の強い雨は、最近10年間(2011~20年)は平均約334回で、1976~85年(平均約226回)の約1.5倍増えた。
気温が上昇すると、雨量が増えるのはなぜなのか。
京都大学防災研究所所長の中北英一教授(水文気象災害学)は、こう説明する。
「気温が上がれば海面温度も上がり、大気に含まれる水蒸気の量も増えるので雨量が増えます。一般的に、大気中の水蒸気量は気温が1度上がるごとに7%増えるとされますが、気温が上がると上昇気流も激しくなり積乱雲が発達しやすくなるため、ゲリラ豪雨のように、水蒸気量の上昇で考えられる以上の豪雨が降ることもあります」