恒大集団が建設中のマンション。ある日本企業には現地から「中国版リーマン・ショックになるかもしれない」との見方も届く(c)朝日新聞社
恒大集団が建設中のマンション。ある日本企業には現地から「中国版リーマン・ショックになるかもしれない」との見方も届く(c)朝日新聞社

 中国の不動産開発大手「恒大集団」に経営破綻の危機が忍び寄っている。世界的な金融危機の発生を恐れる声も。AERA 2021年10月18日号でその背景と見通しを取材した。

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「恒大よ、カネを返せ!」

 中国不動産開発大手の恒大集団に対し、各地で出資者が抗議の声を上げている。恒大は国内総生産(GDP)の2%にあたる約2兆元(約34兆円)もの負債を抱える。10月4日には香港市場での売買が停止された。世界でリスク回避の動きが広がり、日米などの株価が下落した。

 1996年に広東省で創業した恒大は、旺盛な開発意欲で急成長した。不動産だけでなく、サッカークラブの運営や電気自動車の開発など多角化にも積極的で、借金を膨らませてきた。

■「三条紅線」で激震走る

 激震が走ったのは昨年8月。中央銀行の中国人民銀行などが不動産業者の借金を規制する「三条紅線(三つのレッドライン)」を出した。習近平指導部が、不動産向けの金融リスク抑制に本格的に乗り出し、恒大は資金調達が難しくなった。

 今年9月13日に恒大は「考えつくすべての手段で正常な経営を回復する」と声明を出した。恒大には約266億ドル(約3兆円)分の未償還社債があるとされるが、23日満期の米ドル建て社債は利払いをできず、30日以内に払われなければ債務不履行に。恒大が保証するドル建て債も10月3日が期限で、償還できず債務不履行になるリスクもある。破綻(はたん)が現実味を帯びる。

 破綻した場合の世界への影響は楽観できない。米国のリーマン・ショックのような金融システムが揺らぐ「システミックリスク」も指摘される。ただ、中国の金融関係者は「絶対ないとは言えないが小さい」と見る。

 中国当局は直接救済に消極的とされる。一方で、金融機関に不良債権を投げ売りすることを止め、融資を継続させて破綻処理を進められるなど、“強権”で軟着陸させる手段が豊富だ。すでに恒大傘下の盛京銀行の株を国有企業に買い取らせ、危機の波及防止に手を付けている。

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