スマートフォンの普及で急速に広がったマッチングアプリ。それを悪用して、金銭を巻き上げる行為が横行しているという。背景に「裏アプリ」の存在がある。 AERA 2021年9月20日号から。

東京・歌舞伎町は、マッチングアプリの待ち合わせ場所としてよく使われているという(写真と本文は関係ありません) (c)朝日新聞社
東京・歌舞伎町は、マッチングアプリの待ち合わせ場所としてよく使われているという(写真と本文は関係ありません) (c)朝日新聞社

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 7月にあるユーチューバーが投稿したインタビュー動画がネットで話題になった。

 登場した23歳という女性は「頂き女子」を自称。スマートフォンのマッチングアプリで複数の男性と交流し、言葉巧みに金銭的な困窮具合を説明して、2年半で計2億円以上を「頂いた」というのだ。なかには消費者金融で借金をして振り込む男性もいたようだ。

■普通の会社員が危ない

 マッチングアプリに詳しい業界関係者が解説する。

「表向きは男女がアプリ内のやり取りで信頼関係を築いた上で交際することが推奨されています。しかし、実態は『援助交際』や『パパ活』といったところです。この女性が注目を浴びたのは、体の関係はないとしながら、2億円もの金銭を巻き上げたと話しているからです」

 女性は金を「頂く」手口をツイッターに書き連ね、フォロワーから「頂き女子の神」と尊敬されているという。受け取ったお金はホストクラブにつぎ込むためほとんど残っておらず、ふだんはホテル暮らしだそう。

 お金を貢ぐ側にも疑問が湧くが、女性が明かした手口によると、「ファッションに無頓着」「結婚願望はあるが出会いがない」「癒やしを求めている」といった人がターゲットになりやすいという。お金持ちではなく、あえて普通の会社員を相手にするとも。女性は男性の自宅で料理を作ったことがあるとも話しており、そうやって懐に入り込んでいったようだ。

 こうした行為に対し、ある弁護士は「詐欺罪にあたる」と断言する。受け取ったお金は贈与税の対象になりうるともいい、申告しなければ脱税に当たる可能性もある。

 一方、マッチングアプリ側も一連の行為を助長しているとの指摘も出ている。女性の書き込みを増やすため、「裏アプリ」を使って、サクラを募っているというのだ。

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