※写真はイメージ (c)朝日新聞社
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 デルタ株がまん延し、新型コロナウイルスのワクチン接種後も感染する人が増えている。 ワクチン効果の増強を狙い、追加のブースター接種を始める国がある一方、専門家からは異論も出る。AERA 2021年9月20日号から。

【図】ブースター接種について考慮すべき点はこちら

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 住民の8割がワクチン接種を完了したシンガポールで、いったんは落ち着いた新型コロナウイルスの新規感染者数が急増している。9月7日には1年以上ぶりに300人を超えた。過去4週間の新規感染者3225人のうち2460人(76%)は接種完了者、257人(8%)は部分的に終えた人だった。

 シンガポールには及ばないものの世界的にみて接種率が高いイスラエルや米国、英国などでも、いったん収まった流行がまたぶり返している。

 背景には、従来よりも感染が広がりやすく、ワクチンの効果が低下する可能性のあるデルタ株のまん延がある。また、これらの国はワクチン接種の開始が早かったため、初期に打った人は効果が薄れてきているのではないかという指摘も出ている。

 ただし、ワクチン未接種に比べれば、接種から時間が経っても、デルタ株に対しても重症化を防ぐ効果は依然として高い。シンガポールの過去4週間の感染者のうち、ワクチン未接種者は集中治療室での治療が必要になるなど重症化する人が6.1%いたのに対し、ワクチン接種完了者では0.8%だった。

 それでも、感染者増を受け、効果を増強するためにブースター接種を実施したり検討したりする国が増えてきている。

■12歳以上に3回目

 イスラエルは7月30日、持病があるなど重症化リスクの高い人に続き、2回目のワクチン接種から5カ月以上経過した60歳以上の全高齢者を対象に3回目の接種を始めた。その後、対象年齢を段階的に引き下げ、今は12歳以上が対象だ。チリやウルグアイでは高齢者らを対象にブースター接種が始まった。

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