

15歳で書き上げた脚本をもとに「スザンヌ、16歳」で自ら監督と主演を果たした。新星の到来にカンヌ国際映画祭はじめ世界が驚きに包まれている。AERA 2021年9月6日合併号に掲載された記事で、当時をふり返って語った。
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白いシャツにジーンズのスラリとしたルックス、物憂げな横顔は大人びて、ときに幼さも感じさせる。監督、脚本、主演をこなした映画「スザンヌ、16歳」。その映画についてスザンヌ・ランドン(21)はこう話す。
「脚本を書いたのは15歳のとき。もともと俳優になりたかったのですが、家族が映画業界にいたので、恥ずかしくて言い出せなかったんです。『演じることに正当性を持たせるためにはどうしたらいいか?』と考え、まずは書くことからはじめ、19歳で映画にする決心をしました」
映画の主人公スザンヌは、同世代の友人に退屈し、35歳の舞台俳優と出会い、恋心を抱く。
「私自身の経験を反映しているかといえば、YesでもありNoでもある。15歳だった自分が知っていることについて書きたかった。同時に思春期の居心地悪さなど、誰もが経験する普遍的なものについて書きたかった」
■私と父の複雑な関係
やがて二人は惹かれ合うが、愛情の描写は直接的ではない。
「すぐに性行為に至るような関係ではなく、謙虚で礼儀正しい関係を描きたかった」という彼女が選んだ表現方法はダンス。街角のカフェで、静かに二人の動きと呼吸が重なるシーンはユニークかつエモーショナルだ。
また、娘を見守る両親の目線もたしかに描いている。
「スザンヌに何が起きているかを理解してもらうため、両親とのシーンを書くのは重要だと感じていました。特に父との関係は、私と父とのちょっと複雑な関係からインスピレーションを受けてもいるんです」
彼女の父は著名俳優のヴァンサン・ランドン。母も著名俳優のサンドリーヌ・キベルランだ。だが俳優を目指した理由は環境より“映画愛”が大きいという。
「とにかく子どものころからたくさんの映画を観ていました。もし両親が違う仕事をしていても、映画のおかげで『俳優になりたい、映像で自分を表現したい』と思っていたはずです」