辻井卓人[57]
光文社 厚生部

つじい・たくと◆1964年、京都府生まれ。88年、早稲田大学第一文学部哲学科卒業。光文社入社。写真週刊誌編集部等を経て現職

 出会った頃は写真週刊誌の編集者だったので、ネタを集めるため、毎日、人に会うのが仕事のようでした。最初は妻もその一人だったんですが、明るいし、穏やかで話も面白い。それでよく食事に誘うようになったんです。いや、下心もちょっとあったかもしれません。当時は仕事に忙殺され、酒量も多かった。妻と出会ったことが人生を考え直すきっかけになりました。

 結婚後、事務職に移ったことで社会人になって初めて、日常生活を取り戻せたんです。家事をして、妻と過ごす毎日は新鮮でした。以来、食事の支度は僕の担当です。

 行動範囲も広がりました。彼女の希望から山登りが2人の趣味になり、夏に上高地でキャンプをしたことも。落語をよく聞くようになったのも妻の影響です。

 僕はつい物事を悪いほうに考えるタイプ。妻と話していると気持ちの切り替えができるので、とても助かっています。彼女と結婚しなかったら、今の穏やかな生活は手に入らなかったでしょうね。

(構成・角田奈穂子)

AERA 2021年8月9日号