≪ガザ地区で犠牲になる無実の命を思って心が痛む。動物たちもそう。現地の動物保護施設の担当者と連絡を取っている。彼の家族は無事だが、動物たちが怖がって逃げ出したと。みんな命を懸けて世話を続けている。どうか寄付を。西岸地区の友人を通じて届けます≫

 アラブ系イスラエル人の女性(22)とユダヤ系イスラエル人の女性の投稿には、3万超の「いいね」が集まった。

≪救急隊の勤務が終わってバスで帰るのは一緒。どっちが襲われそうになっても助けられるよう、お互いに催涙スプレーを持って。救急隊員としてつらい現場も多い。疲れ切った私をハグしてくれるのは彼女。午前5時のお祈りに起こしてくれるのも彼女。心配性の親も彼女との外出なら許してくれる。私たちがもたらすのは平和。将来、子どもが生まれたら、一緒に遊ばせようねって言っている。次の世代も私たちみたいに育つ。こんな約束をしている。「この国に何が起ころうとも、私たちは離れない。だって家族だから。姉妹だから」≫

■脅迫メッセージが届く

「戦争をやめよ」「敵同士じゃない」「平和を」──。

 各地でアラブ系とユダヤ系の人々がともに反戦デモに立ち上がっている。エルサレムでは「人間の鎖」ができた。こうしたことは日本のメディアにはなかなか取り上げられない。

 米国や日本などはハマスをテロ組織と認定する。ハマスは、イスラエルの絶滅とユダヤ人の皆殺しを憲章に掲げている。

 だが、「世界中が悪者にするのは私たち。ニュースもネットも読んでいると心が傷つく。実際の攻撃よりつらい」。

 ルーシー(42)はそう話す。

「ツイッターもTikTok(ティックトック)もイスラエルへの憎悪であふれる。イスラエルに同情的な投稿をすると、大量の脅迫メッセージが届く」

 サラ(46)はそう悲しんだ。

「もっと私たちイスラエル人が死んだら世界は同情するのかな」との声もSNS上で広がる。

「ユダヤ人どもを殺せ」。英ロンドンで、パレスチナ自治政府の旗を翻す車列から男たちが叫んだ。米ロサンゼルスのすし店では暴徒集団が「ユダヤ人はいるか」と尋ね、食事客らを襲った。反ユダヤ感情にもとづく憎悪犯罪が世界中で広がる。

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