おもちゃにカラーシールを貼って色分けしたり、土間に貼った足跡シートに合わせて靴を置く競争をしたり、マスキングテープで作った駐車場に車のおもちゃを駐車させたり。ある日、息子に呼ばれて、見ると片付けてるんです。頭を出すから撫でたら、すごく笑ったんですよ。

 息子と向き合って感じたのは、息子はできないのではなくて、やり方を知らないだけ、ということ。「できない」って言われると、子どももそう思ってしまう。でも、できないんじゃなくて、知らないだけです。

■成功体験知ってほしい

「うちの子は片付けができない」「お手伝いをしない」という場合も、やり方を知らなかったり、お手伝いができない環境になっているのではと思います。たとえば、子どもの手が届くところに炊飯器があって、横にしゃもじがあって、引き出しを開けたら家族のお茶碗がある。そんな状況を作るだけで、ぐっと手伝いはしやすくなります。

 息子には今、プログラミングやフットサルを習わせてみたり、いろいろなことを体験させています。得意なものを見つけて、成功体験を知って自信を持ってもらいたい。根気よくフィットするものを見つけてあげるのは、親の役目かなと思っています。

 今の夫婦の役割分担は、妻が叱って、僕が寄り添う係。叱られた後、「わかってるよね」と慰めたほうが、息子が気持ちを切り替えてリトライするのが早くなるんです。逆に僕が同じように叱ると、息子が陰(いん)に入ってそれが続いてしまうので。

 僕らの判断が息子にとっていいのか悪いのか、まだ迷っている部分もあります。でも、この間すごくうれしいことがあったんです。息子が片付けを絵日記に書いてくれて。涙が出ましたね。ね、泣いちゃうでしょ?

 うちは夫婦そろってすごくおしゃべりなんです。以前は、息子が本当に静かだったから、ママ友が「子どもがうるさくて」というのが羨ましくて、「『うるさい』って一回でも言えたらうれしいね」と話していました。今は、息子に1日に100回くらい「うるさい!」って言っています。僕に似て声も大きくてね。うるさすぎて、幸せです。

(構成/ライター・酒井美絵子)

AERA 2021年5月24日号