だからこそ、東京五輪・パラリンピックの開・閉会式のイベントにも起用したい、と関係者は考えたのだ。

 水無田さんは今回明らかになった佐々木氏の演出案について、「積極的ルッキズム」であり、かつ女性蔑視でもあり、時流からかなり遅れている上、「あらゆる差別を認めない」というオリンピック憲章にも違反するものだった、と指摘する。

「積極的ルッキズム」とは水無田さんの定義によれば、身体的特徴を批判することはもとより、笑いの対象としてあえて「いじる」演出手法なども含まれる。現在多くの人が「受け入れがたい」と認知するようになった差別や人権侵害に当たる行為だ。水無田さんは言う。

「佐々木氏の演出案は極めて残念な発想ですが、打ち合わせ段階で批判を浴びて撤回されたことで、巨費を投じて日本の人権意識の低さを世界中に喧伝するという事態を回避できたことは幸いだったと思います」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年4月5日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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