──ポスターや建築といったジャンル内での表現ではなく、課題解決のために何をメディアにして、そこにどのような表現を乗せ、組み合わせていくか、というとらえ方ですね。

 それを俯瞰的に見ていただくには、国立新美術館のような大きな展示空間が打ってつけだと思いました。ただ、準備には3年もかかりました(笑)。300坪の倉庫を借りて、そこに展示室と同じ天井高5メートルのアトリエを設けて、シミュレーションを繰り返したりして。

──キュレーションの見どころはズバリ、どこですか。

 会場は時間軸を基本にしながら、広告、ロゴ、ブランディング、アートワークなど六つのテーマで構成していて、館内を巡るうちに、ソリューションが重層的になっていくことが体感できるところです。入ってすぐの大展示室は、仕事の出発点となった広告表現です。僕は1989年に新卒で博報堂に入社して、AD(アートディレクター)として広告表現にかかわりました。そのころ「デザイン」という言葉はかなり狭義に使われていて、対象はポスターなど二次元がメインだった。でも、商品と顧客との接点はそれだけじゃなくて、商品のパッケージ、店の棚や空間、売り方すべてがコミュニケーションを媒介するメディアになります。それらを総合的にとらえた上で、最適なビジュアルを実現していく。その設計こそが、まさしくデザインのパワーだと考えていました。

■従来の広告戦略を革新

──2000年に独立し、ゼロ年代に手掛けたのがSMAPのCDリリースやコンサートツアーのプロモーション。まだTV広告の影響が大きかった時代に、あえて違うメディア展開で注目されました。

 その時の予算は大きな額ではありましたが、TV広告だとスポットだけで飛んでしまい、かつ効果も疑問でした。だったらそこではなく、違う場所で目立とうと、渋谷区と港区のストリートジャックを行ったんです。路上パーキングに駐車中の車全部にSMAPのロゴを入れたカバーを被せたり、期間限定の自販機でオリジナルの清涼飲料水を販売したり。しかも、飲料はあえて美味しくない味にした(笑)。メンバーの顔は一切、出さなかったのですが、すごく話題になって、TVでも盛んに紹介された。従来の広告戦略を革新する手ごたえがありました。

次のページ