永井千晴(ながい・ちはる)/1993年、神奈川県生まれ。学生時代に温泉メディアのライターとして、半年間、日本全国の温泉を取材。その後、旅行情報誌に2年間在籍し退職。現在は別業種の会社に勤務し、休みに「ひとり温泉」にでかけている(撮影/写真部・張溢文)
永井千晴(ながい・ちはる)/1993年、神奈川県生まれ。学生時代に温泉メディアのライターとして、半年間、日本全国の温泉を取材。その後、旅行情報誌に2年間在籍し退職。現在は別業種の会社に勤務し、休みに「ひとり温泉」にでかけている(撮影/写真部・張溢文)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

訪れた温泉は約500湯。暇さえあれば女ひとりで温泉をめぐる「温泉オタク会社員」が語る、温泉の選びかた、楽しみかた。市井の温泉ファンならではの偏愛にあふれた、実用的な温泉案内だ。著者の永井千晴さんに、同著に込めた思いを聞いた。

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 訪れた温泉は約500。現在は会社に勤めながら、隙あらば女ひとり、温泉をめぐる──そんな市井の温泉オタク・永井千晴さん(28)が、温泉の楽しみかたと「推し」の温泉を紹介するのが本書だ。

「学生時代、温泉メディアのライターとして、ひとりで全国の温泉をめぐったのが、ハマったきっかけです。最初のスタイルのせいか、『ここぞという湯』に入るときはひとりがいいですね。一湯で集中できますから」

 日本には約3千の温泉と2万の温泉施設がある。熱海や別府といった有名なところもあれば、人里離れた山奥に一軒宿だけという温泉地も。規模も集客力も様々だが、少子高齢化の中、多くの温泉が「ギリギリ」で経営している。

「私が温泉オタクとして活動を始めたのは、多くの人に温泉に行ってもらい、現地で“課金”してほしいという気持ちからでした。自分の推しの温泉に行って、1泊することでその温泉が一日でも長く営業できて、最高のお湯が守られるのなら、温泉旅行も立派な“推し活”です」

 永井さんの温泉への情熱は本にもあふれている。「いつ行くか」に始まり、目的に合った温泉地や宿の選びかた、交通手段、宿での過ごしかた──など、温泉旅行を充実させる具体的な方法が見事に整理されているのだ。

「旅行雑誌では、読者の課題を考えてから書いていました。みんなが何に困っているのかを聞いてみると『自分が行きたいのがどんな温泉地なのかがわからない』と。一番大事な情報なんですが、たどり着くのが難しいんです。そこで本には東京と大阪から『1泊2日で行けるおすすめ温泉』などのチャートと具体的な温泉の紹介も載せました」

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