仕事に集中すると、こまめに立ち上がるのは難しい。貧乏ゆすりでこまめに足を動かすだけでも、リスクは軽減できる(撮影/写真部・馬場岳人)
仕事に集中すると、こまめに立ち上がるのは難しい。貧乏ゆすりでこまめに足を動かすだけでも、リスクは軽減できる(撮影/写真部・馬場岳人)
AERA 2021年2月8日号より
AERA 2021年2月8日号より

 起きている時間の大半を座った状態で過ごし、外出も運動もせずに食べてばかり。そんな生活が10年、20年後のがん人口を増やす可能性があると、AERA 2021年2月8日号で専門家は指摘する。

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 朝8時50分、日の当たらないマンションのこたつの上で、パソコンを立ち上げる。女性(35)が勤める大手電機メーカーはリモートワーク中心となり、出勤するのは2週間に1度だけ。平日は家の外に出ることはほとんどない。

「会社はリモートのシステムが整って軌道に乗ってきたので、今後もリモートワークを推奨するようです。通勤がないのは助かりますね」

 女性は笑うが、問題もある。仕事をしながらずっとお菓子をつまんでいるためか、運動不足のためか、体重が5~6キロ増えた。以前は週末にしか飲んでいなかったビールも、毎晩開けてしまうようになった。ずっと床に座っているせいか、腰痛も悪化してきた。

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一さんはこう警告する。

「巣ごもりの生活には健康を阻害する要因がいくつかあり、がんのリスクも増やします。もちろん、すぐに発症するわけではありませんが、この状態が続いた場合、10年、20年かけてがん人口が増加するのではないかと、危惧しています」

 まず、問題は座りすぎだ。

 健康器具「あしふみ健幸ライフ」の販売会社は昨年4月、在宅勤務中の20~50代男女を対象に、在宅勤務と運動に関する調査を実施。すると、8割が「在宅勤務になって座って仕事をする時間が増えた」と回答した。

 昨年6月、米国テキサス大学のMDアンダーソンがんセンターが「座る時間とがん死亡リスク」について論文を発表した。8千人を対象に、1日の起きている時間(16時間)のうち、「座っている時間」を加速度計で計測。「最も座らないグループ」「最も座るグループ」「その中間」の三つにグループ分けしてがんリスクを調査したところ、「最も座るグループ」は「座らないグループ」の1.82倍、がんのリスクが高いことがわかったという。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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