「喫煙や肥満など他のリスク要因も考慮したうえで比較しているのですが、驚きの数字です。たとえば喫煙はがん全体の原因の約3割を占め、リスクを6割増やすとされていますが、それよりも影響が大きいことになります」(中川さん)

 実は、なぜ座りすぎががんのリスクを高めるのか、そのメカニズムはわかっていない。だが、座りすぎていると運動をしていてもがんが増え、死亡率も高くなるというデータがあることから、運動不足とは別のメカニズムと考えられる。週末にまとめてジムで運動するだけではそのリスクを解消できないという。運動でリスクを解消するためには、「1日に60分以上の運動が必要」とする報告もある。

「なんらかのホルモンが関係しているという説もあります。とにかく、ずっと同じ姿勢で太ももの筋肉を動かさないことがよくないと考えられます」(同)

 ではどうするか。仕事の合間にこまめに立ち上がり、ストレッチなどをするといい。トイレに行ったり、飲み物を取りに行ったりするなど、30分に1回は動くことを習慣化するのもいいだろう。だが、仕事に追われているときはそれも難しい。

 そこで中川さんがおすすめするのは、「貧乏ゆすり」だ。忙しいときでも、デスクから離れずに済む。在宅勤務なら、他人の目を気にする必要もないし、オンライン会議中でもできる。

「最もお手軽かつ有効な『運動』です。私はいつもやってます。貧乏ゆすりではなく、『健康ゆすり』と言いたいですね」(同)

(編集部・小長光哲郎、ライター・谷わこ)

AERA 2021年2月8日号より抜粋

著者プロフィールを見る
小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

小長光哲郎の記事一覧はこちら