本書は「I 理論編」と「II 技術編」で構成されている。各章が独立しているので、興味のあるトピックから読むことも可能だ。付属のCDのほかに、本の特別ウェブサイトでは阿部さんが登場する動画も公開されている。

 リスニングの訓練方法は工夫する余地があるので、良い方法について多くの人と議論を続けたいそうだ。

英語教育は表層的な実用性にとらわれすぎました。かつての教科書にはマザー・グースや諺(ことわざ)があって、リズムを習得するのに役立っていました。今はネットに音源もありますから、興味が持てて、少し背伸びするようなものを選ぶといいと思います。耳で聞いて“発見”したことは、驚きがあるから覚えやすいんです」

(ライター・矢内裕子)

■東京堂書店の竹田学さんオススメの一冊

『ただ、そこにいる人たち 小松理虔さん「表現未満、」の旅』は、現代の知の潮流に棹差す一冊。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 クリエイティブサポートレッツは、障害などの違いを乗り越え、アートを通してさまざまな人が共に生きる社会の実現を目指し活動する認定NPO法人である。障害に起因する、一般的には問題行動とされるふるまいや特性を否定せず、文化創造の軸ととらえる「表現未満、」プロジェクトを核に、介護事業を展開し観光や芸術イベントなどを数多く企画する。ローカルアクティビストの小松理虔(りけん)がレッツを体験し、この本ができた。

 本書は印象的な写真でその人の丸ごとを肯定するレッツの空気を伝える。またレッツを東浩紀の提唱する「誤配」などの哲学概念と関連づけ、その意義を広く知の潮流に位置づける。理事長の久保田翠は20年にわたる活動の根底には、障害のある息子や自分を疎外する社会への怒りがあると語る。その怒りを共にすることを忘れずにいたい。

AERA 2021年1月11日号