社会主義時代のチェコのロック作品 サイケデリックなザ・マタドールズに今こそ注目! (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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社会主義時代のチェコのロック作品 サイケデリックなザ・マタドールズに今こそ注目!

連載「岡村詩野の音楽日和」

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岡村詩野AERA
「ザ・マタドールズ」のジャケット(写真提供:日本コロムビア)

「ザ・マタドールズ」のジャケット(写真提供:日本コロムビア)

《Supraphon》のロゴ(写真提供:日本コロムビア)

《Supraphon》のロゴ(写真提供:日本コロムビア)

 非常に興味深い音楽作品が日本でリリースされた。チェコと日本の外交関係樹立100周年を記念し、【東欧音楽紀行】というシリーズ名で発売されたチェコのアーティスト、バンドのアルバムだ。(1)ザ・マタドールズの「ザ・マタドールズ」(2)ミハル・プロコップ、フラムス5の「古代都市ウル」(3)フラメンゴ「時計の中の鶏」(4)ジャズQの「シンビオシス」(5)プラメニャーツィ/フラミンゴ/&マリエ・ロットロヴァーの「75」の5作品だ。

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 注目すべきは、これらの作品がすべて1960年代後半から70年代にかけて、本国で発表されたものだということ。つまり、チェコがまだ社会主義のチェコスロバキアだった時代のポピュラー音楽作品なのである。

 チェコからは多くのクラシック音楽の作曲家が誕生している。特にドボルザークの「スラブ歌曲集」、スメタナの「我が祖国」(「モルダウ」で知られる)といった作品はクラシック音楽の枠組みを超え、広く東欧の音楽として親しまれていると言っていい。ポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど近隣諸国を含めたいわゆる民族音楽としての東欧の音楽には、現代的にアップデートされるなど広く聴かれているクレツマーやロマ音楽などがある。例えばタラフ・ドゥ・ハイドゥークスやファンファーレ・チォカリーアといった大所帯のグループが日本でも紹介されてきた。

 だが、今回リリースされた5作品はそうした伝統的な現地の音楽とは明らかに異なる。西欧――アメリカの大衆音楽の影響を受けた、言わばロックやジャズ・ロックなのだから驚く。まさかこんな先鋭的なバンドやアーティストが当時、活動していたとは。

 中でも強烈な印象を与えるのが60年代半ばに結成されたザ・マタドールズだ。ビートルズ、ローリング・ストーンズ、キンクス、ザ・フーといった60年代のブリティッシュ・ビート時代のバンドと比べても、全く違和感のないグルーヴィーなロック。実際、今回、日本でリリースされた68年発表の「ザ・マタドールズ」には実にさまざまなカバー曲が収められている。それはローリング・ストーンズもカバーしたテンプテーションズの「マイ・ガール」や、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズの「アウト・オブ・リーチ」(作者は、フリートウッド・マックの創設者で、今夏に亡くなったピーター・グリーン)の「独りぼっち」、はたまたボブ・ディランの「イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー」、ウィリー・ディクソンの「俺の女にしてみせる」も収められている。オルガンを生かしたサイケデリックな演奏と、ブルーズ色強いソウルフルなボーカルが印象的だ。ビートルズやローリング・ストーンズといったイギリスのバンドが初期、アメリカのブルーズやロックンロールの曲を多く採り入れていたことを思い出す。


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