また収録された、小島慶子、清田隆之、星野俊樹各氏との対談が充実していて、読み応えがある。男性の言い分、視点も入っていることで、本に多角的な視点が盛り込まれているのだ。

「日本の男性は自分の感情を言語化するのが不得手ですよね。表に出してよい感情は怒りだけだと思っている人は、『キレる』という行為に出てしまうのでは。これから大人になる男の子たちには、暴力や差別の被害者にも加害者にもなってほしくない。女性が生きづらい社会では、男性も幸福にはなれません」

 日本の現状を見ると、つい悲観的になってしまうが、「長い目で見れば社会は良くなっている」と太田さんは言う。

「100年前には女性の参政権もなかったんですから。昔より今は良くなっているし、未来は私たちで変えていけるんです」

(ライター・矢内裕子)

■HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE新井見枝香さんオススメの一冊

小説『自転しながら公転する』は、眩しすぎる登場人物のいない、優しい物語。HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE新井見枝香さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 都会のアパレルブランドで社員として働いていた都は、母親の重い更年期障害がきっかけで茨城の実家に戻り、近くのアウトレットモールにある洋服屋で店員として働いていた。父と2人、力を合わせて母の看病をする娘といえば聞こえはいいが、彼女が前の仕事を辞めたのは、それだけが理由ではない。32歳になる都は、東京タワーではなく牛久大仏を眺める生活に不満を抱えていた。

 人一倍幸せになりたいくせに、臆病で行動に移せない。自分に甘くて、どこかで人を見下していて、恥ずかしくなるほど了見が狭い。しかし、そんなことは、自分がいちばんわかっている。だけど、どうしてもうまくいかないのだ。なぜだろう、自分の話をしているみたいだ。眩しすぎる登場人物のいない物語は、それでも人を愛したい私たちに、優しかった。

AERA 2020年11月16日号