イラスト 添田あき
イラスト 添田あき

 コロナ禍で広がったリモートワーク。弊害も目立ち、出勤に舵を切る企業も増える。だが、本当にダメなのか。新しい働き方はまだ始まったばかり。弱点をあぶり出し、対策を講じれば、「もっといいリモート」はきっと実現できる。AERA 2020年11月9日号は「リモート改善」を特集。

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 新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言によって一気に広がったリモートワーク(在宅勤務)。通勤ラッシュから解放される、自分のペースで仕事ができるといったプラス面もある一方、弊害も目立ってきた。

 東京商工リサーチが9月上旬までに行った調査では、資本金1億円以上企業の22.5%がリモートワークを「実施したが、現在は取りやめた」と回答しているほか、週2回、週3回の出勤など徐々にオフィスでの仕事に舵を切っている企業も多い。

 ただ、目の前に迫った冬には再度の爆発的な感染拡大が懸念され、「リモート第2波」が押し寄せる可能性はかなり高い。そこでアエラは、明らかになってきたリモートワークの弱点を洗い出し、それを克服する方法を探ることにした。

■「単線型」より「複線型」

 まず、多くの企業で現れたリモートの弱点が、コミュニケーション不足だ。社会心理学やコミュニケーション論について詳しい明治大学法学部の堀田秀吾教授は、リモートでは「複線型コミュニケーション」が失われがちだ、と指摘する。

「実際の会議では、隣の人とひそひそ話して確かめ合ったり、それをもとに発言したりする機会が多くあります。いわば横のつながりの会話がメンバー間を複雑に行き来する。これが複線型コミュニケーションです。しかしビデオ会議では、1人が話し、ほかの全員が聞くという『単線型コミュニケーション』しか生まれません」

 単線型は情報伝達には優れるが、課題解決や多角的な検討には向いていないという。

 そんな「複線型」をリモートでも実現しているのが、クラフトビールメーカー・ヤッホーブルーイングだ。同社のマーケティング会議をのぞいてみた。

 ビデオ会議ツール「Google Meet」を使い、50人ほどが参加。ポイントは、ビデオ会議と同時にチャットで活発なやりとりが行われていることだ。営業部門が先月の売り上げを報告すると、チャット欄には「すごい!」「おおお!」「パチパチ(拍手マーク)」といった投稿が並ぶ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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