■自分のスキルに「自信」

 鈴木さんの副業先の一つ、長野県の不動産会社レントライフは従業員約70人の中小企業だ。同社では昨年10月頃から自社サイトが検索エンジンで上位に表示されないという問題が生じた。集客を大きく左右するだけに改善は必須だったがそれには「SEO対策」と呼ばれる特殊なスキルが必要だ。同社の経営戦略本部の矢崎大城(やさきたいき)部長は、専門の人材を探そうと地元のハローワークや求人サイトでも募集したが、反応はなかったという。

「地方でそうした専門人材を探すのは至難の業です。悩んでいたところメインバンクの紹介でジョインズを知りました。鈴木さんは東京の最前線で活躍しているウェブマーケティングのプロ。まさに求めていた人材でした」(矢崎さん)

 両者は業務委託契約を締結。時給は5千円とした。地方では破格の金額だが、矢崎さんは、「今月は何時間、こういうことをしてほしいというピンポイントで仕事を頼めるのでメリットが大きい」と満足げだ。もちろん社員で雇うよりはるかに低コストだ。

 鈴木さんは広島や山口の企業でも副業を行い、月に10万円前後を稼ぐ。副業を通じて各地と関係を広げ、将来は多拠点生活をするのもありだと考える。

「学校もオンラインで学ぶ環境が整えば、娘も連れていきたいです」(鈴木さん)

 次に紹介するのは、前出のパターンの二つ目だ。

 9月半ばの週末、ある大手メーカーが360人の社員を対象にオンライン研修を開いた。タイトルは「50を過ぎたらダブルキャリアは当たり前」。登壇したのは50代後半のOBだ。社員だった昨年10月から半年間、終業後や週末の時間を使って地方の精密部品会社で業務効率化支援の副業をした経験を語った。

「自分のスキルはまだ売れる」

 副業をきっかけに自信が生まれ、今年5月に早期退職。他社に転職したという。

 大企業ではバブル時期の前後に大量採用した人材の層が厚く、50代でも管理職になれない、あるいは部下なし管理職にならざるを得ない社員も少なくない。企業にとっても彼らの処遇やキャリア支援は大きな課題だ。だが前出のジョインズ・猪尾社長は、「大企業で光が当たっていない人材こそ地方の中小企業で輝ける」と話す。

次のページ