


AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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19歳の時に「マイ・マザー」(2009年)で監督デビューしたグザヴィエ・ドラン(31)は、これまでに7本の長編映画を発表している、カナダが誇る若手監督だ。複雑な母子関係やゲイとしてのアイデンティティーなど、私的なテーマを見事にスクリーンに焼き付けてきた。
最新作「マティアス&マキシム」で描くのは、友情と愛情の微妙な関係だ。アルコール依存の母と二人暮らしで、苦労が絶えない青年マキシムをドラン自身が演じる。マキシムは5人の親友に支えられ日々を過ごしていたが、故郷を離れて2年間のオーストラリア移住を決意する。旅立ちが近づいたある日、友達の妹の自主制作映画に出演し、幼なじみの青年マティアスとキスをしたことで、秘めていた愛情が目覚めるのだった。
「男友達の間にある性的な緊張を描いているが、これは男性に限ったことではないと思う。また男性グループの友情だけでなく、母という存在が本作でも重要になったんだ。僕にとって母は重要なテーマ……いや、テーマというのはおかしいな。自分の発端であり、家族であり、人生の一部。逆に父親の存在を作品に入れる必要性を感じたことはないんだ」
まず、観る人の目に飛び込んでくるのは、マキシムの顔にある大きなあざだ。
「撮影前、顔にあざをつけて町を歩いた。しばらくは人の視線が気になったし、自分でも醜いと感じた。でも、友達がいたことでそれを忘れられた。あざは僕が内部に抱えている傷や恐れを表に出したものなんだ。友情によって守られている」
過去7本の長編映画は、故郷のモントリオールで、親しい俳優や友人と作り上げた。彼自身の私生活における友情の大切さをこう語る。
「制作する仲間はいつも同じ。愛し尊敬する俳優と一緒にずっと映画を作ってきた。本作にしても『友達と撮影したい』という欲求から生まれた映画だ。友達と一緒にいることで、守られている、安全だと感じるからかもしれない」