これに対し、パラ陸連の三井利仁理事長は「来年のパラリンピック成功に向け、エビデンスを求めるための第一歩。全てをやると問題点がどこなのか見えなくなってしまうので、まずは競技に集中したかった」と、無観客にした理由を説明。観客の有無は今後も焦点になる。

 記録続出で、選手が自粛期間中も工夫して練習を続けてきた様子がうかがえた。パラ陸連の増田明美会長は「これだけの記録が出たのは選手のありがとうの気持ちの表れ」と話し、選手からも開催への感謝が語られた。

 一方で出場を見送った選手や欠場した選手も多数いた。「感染を恐れて参加を見送ったとみている」と指宿立強化委員長。日本知的障がい者陸上競技連盟の奥松美恵子理事長は「単独で行動できない選手も多く、保護者が福祉や介護の仕事をしていて遠征に連れていけないことがある」と話し、介助の必要な選手がいる障害者スポーツならではの課題も浮き彫りになった。

 来年夏に向け熱中症対策も焦点だ。素早く体温を下げるアイスバスを初めて設置し、1人が利用した。パラ陸連強化委員会の上條義一郎・暑熱対策専門員は「障害の影響で汗をかきにくかったり、水分摂取を制限したりする選手もいる。障害は多様なので個別の対応が必要です」。

 開催できたからこそ、課題も見えてきた。経験を積み重ねた先に来年の成功がある。(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年9月21日号