フィールド競技は代表撮影になったため、グラウンドに入れないカメラマンは観客席から撮影(撮影/編集部・深澤友紀)
フィールド競技は代表撮影になったため、グラウンドに入れないカメラマンは観客席から撮影(撮影/編集部・深澤友紀)
囲み取材はアクリル板とマイクが用意され、選手たちからは「わーお」と驚きの声も(撮影/編集部・深澤友紀)
囲み取材はアクリル板とマイクが用意され、選手たちからは「わーお」と驚きの声も(撮影/編集部・深澤友紀)

 来年の五輪・パラリンピックへの試金石となる第31回パラ陸上日本選手権が無観客で開催された。入念に感染対策が取られる中で記録は好調。一方で、課題も見えてきたという。AERA 2020年9月21日号では、コロナ禍でのパラ陸上日本選手権を取材した。

【写真】囲み取材はアクリル板とマイクが用意される

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 コロナ禍でスポーツ大会の延期や中止が相次ぐ中、9月5、6日に日本パラ陸上競技選手権が開かれた。日本選手権レベルの開催は健常者大会を含めても緊急事態宣言後初で、来年の五輪・パラリンピックに向けたモデルケースに、と注目された。

 埼玉県谷市で行われた大会では、注目の女子走り幅跳び・中西麻耶(阪急交通社)がアジア新記録を出すなど、世界新1、アジア新8、日本新17が生まれた。主催した日本パラ陸上競技連盟内部でも開催に慎重な意見があったが、走り高跳びの鈴木徹(SMBC日興証券)らアスリート委員から「やってほしい」と要望が出されたことが開催を後押しした。

■取材はアクリル板ごし

 障害がある選手の中には感染した際の重症化リスクが高い選手もいるため、感染予防対策として、選手や競技役員、メディアなど会場入りするすべての人に大会の2週間前からの体調管理と検温を義務付けた。選手らにはアルコール消毒液を1本ずつ配布し、選手が共有する用具はスタッフが消毒した。密を避けるため競技役員やボランティアを3割減らした。

 取材現場も様変わりした。記者は各社2人までと制限され、密になりやすい試合後の囲み取材は記者会見スタイルに。選手の前にはマイクとアクリル板が置かれた。取材対象選手は各日6~7人と制限され、重症化リスクの高い選手は取材が見送られ、コメントが提供された。カメラ取材も原則としてグラウンドへの立ち入りは禁止され、投てきや跳躍などフィールド競技は代表者のみが近くで撮影し、各社に提供する形がとられた。

■今後は観客の有無焦点

 大会は無観客で行われた。これまで観客の手拍子で自らを奮い立たせてきた走り幅跳びの山本篤(新日本住設)は、5回目の跳躍の前に手拍子を求め、観客席にいた関係者数人が応じた。山本は「意外と少人数でも響いた。ファウルになったけど、手拍子があるとすごく気分が乗りました」と振り返り、「うまくやれば十分観客を入れてもできると思う」と運営側の判断に疑問を呈した。

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