──胸が痛むような切ない恋愛が描かれています。恭一というキャラクターへの理解はどう深めていきましたか。

 恭一はもともと同性が好きだったわけではなく、僕と同じストレートな人間です。スタッフの方々が恭一の気持ちの流れを大切にしてくださり、ほぼ順撮りで撮っていったため、演じるなかで気持ちも自然とつながっていきました。頭で理解するというよりも、その瞬間、瞬間に感じていたことがつながり、恭一という人間になっていたように思います。

 この作品を通して感じたのは、男女で起きる問題も、男同士で起きる問題も大きくは変わらない、ということ。そういう意味では、「こういう感情を経験したことがある」と思えたからこそ、表現できたものもあるかもしれません。

──観終わった後も、「いま恭一はどうしているのだろう」という気持ちになります。

 クランクアップした時点で、恭一は僕のなかからはいなくなりました(笑)。どの作品でも割とそうですし、曲も演奏したら忘れてしまうこともあります。自分にとって音楽も芝居も、“そのとき、その瞬間のもの”なのかもしれません。映画の場合、刻まれた時間がスクリーンに残るので、それはとてもうれしいことです。

 演じるって、自分にとってはすごく大変なことなんです。自分とは違う人間のなかに、感情を吹き込んでいく。それは楽しくもあり、苦しい作業でもあります。

 今回は感情を高め、あふれさせていくところに苦労しました。そこまで感情を持っていくためには、自ら精神的に追い込まなければいけないこともあり、それを続けていると普段の生活にまで影響が出てしまう。非日常的なことをしているんだな、という感覚もあります。

 クランクアップするときは、そこから解放されていく感じがあります。まだまだ現場にいたいという気持ちはあるので、複雑な感情ですね。

──改めて感じた“演じることの面白さ”はありますか。

 監督が頭のなかで思っていることに、どれだけ近づけられるか。行定監督が「僕はこう思うけれど、どう思う?」と聞いて下さり、それに対し「やってみます」と答えて、それを毎日繰り返していく。「どういう意図で言っているのだろう」「そのためには、どうすればいいんだろう」と考えることが、自分のやりがいにつながっていた気がします。

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