岩田健太郎「世界を知らない」という自覚が感染症のプロを生んだ<現代の肖像> (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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岩田健太郎「世界を知らない」という自覚が感染症のプロを生んだ<現代の肖像>

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木村元彦AERA
忖度だらけの国の中で、厚労省データや学会のガイドラインもおかしければ真っ向から批判する(撮影/植田真紗美)

忖度だらけの国の中で、厚労省データや学会のガイドラインもおかしければ真っ向から批判する(撮影/植田真紗美)

いつも正攻法ゆえにアドバイスも受ける。「厚労省なら、この人で、この根回しだろ、とか。でも僕はボタン押しの順番を知っている、みたいなことには興味がないし、得意でもないんです」(撮影/植田真紗美)

いつも正攻法ゆえにアドバイスも受ける。「厚労省なら、この人で、この根回しだろ、とか。でも僕はボタン押しの順番を知っている、みたいなことには興味がないし、得意でもないんです」(撮影/植田真紗美)

 ダイヤモンド・プリンセス号の感染症対策を告発する動画を公開し、一躍知られるようになった。「失敗したことではなく、責任者が失敗と向き合えないことが問題だ」とこの国の本質的な問題を突く。真実を前に一切忖度しない感染症の専門医は第一人者か、アウトサイダーか。
AERA 2020年9月7日号に掲載された「現代の肖像」から一部紹介する。

*  *  *
 26年前の8月、長野県の乗鞍で医学生向けの一風変わったセミナーが開かれた。全国の微生物学の教授たちが、自分たちの身銭を切って合宿施設を手配し、有志学生を集めて行った感染症についての勉強会であった。今でこそ、新型コロナウイルスの出現で微生物研究は医学界のトッププライオリティだが1990年代前半は感染症を学ぶことはもはや時代遅れ、という考えが一般的であった。医学生たちの大半ががんや生活習慣病の研究に流れていく中で、このままでは微生物学に関心を持つ学生が途絶えてしまうという危機感のもと、同学を専門とする教授たちが、若い学究をリクルートしようと開いたものである。順天堂大学の教授・平松啓一を筆頭に当代随一の講師たちによる最新微生物学の講義が惜しげも無く行われた。

 なぜ、今頃、感染症なのか? これをやって出世やカネになるのか? そこに即物的な解答は無い。それでもジリ貧とさえ言われたジャンルの学問を学ぼうとしただけあって、全国からやってきた18人の学生はいずれも個性的な若者で、そのひとりに島根医科大学(現島根大学医学部)の4年生、岩田健太郎(49)はいた。

 産業医科大学5年生でこのセミナーに参加し、今は職業性感染症学の権威として労働安全衛生総合研究所統括研究員の任にある吉川徹は振り返る。

「乗鞍セミナーは先生方の熱意と感染症の世界の面白さから、その後の医師としての人生に大きな影響を受けました。学生たちもユニークでしたが、中でも岩田さんはあの頃から、抜きん出ていました」


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