多くの受験生は夏以降、過去問の攻略に勤しむ。だが入試のあり方が変わっていけば、受験=過去問対策ではなくなるかもしれない(撮影/大野洋介)
多くの受験生は夏以降、過去問の攻略に勤しむ。だが入試のあり方が変わっていけば、受験=過去問対策ではなくなるかもしれない(撮影/大野洋介)
AERA 2020年8月31日号より
AERA 2020年8月31日号より

 大学受験に欠かせない模試も、コロナ禍にオンライン化が進んでいる。駿台予備学校と教育ベンチャー企業がタッグを組んだ。AERA 2020年8月31日号は、オンラインならではの魅力を紹介する。

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 会場で一斉に試験を受けるリスクは、受験本番だけでなく、前段階の模試のあり方も変えつつある。教育ベンチャーの「atama plus(アタマプラス)」と駿台予備学校を展開する駿河台学園は、7月末から8月初めにかけて、オンラインでの共通テスト模試を共同で開催。業界初の取り組みには2万8千人の受験生が参加した。

 期間中ならいつでも受験が可能で、試験を始めると時間がカウントされ、制限時間になると自動的に解答が回収される。紙での模試では結果が返ってくるまでに1カ月近くかかるのに対し、オンライン模試は受験後すぐに結果が出る。さらに、どこが理解できていないから問題が解けなかったのかをAI(人工知能)が瞬時に導き出し、おすすめの復習単元も表示する。

 オンライン模試に踏み切ったきっかけは、コロナ禍で大学校舎などの会場を借りられなくなったからだが、かねてから両者はAI教材を共同展開しており、テクノロジーを使った新しい形の模試を模索していたという。

「従来、駿台の模試は都市部に住む生徒が多く受験し、上位層向けのイメージが強かったが、オンライン化で地方の生徒の割合が2割強から3割に増えた」

 駿河台学園の山畔(やまくろ)清明専務理事はそう話し、受験層の広がりに期待を寄せる。

■データから学習の傾向把握

 これを機に両者はオンライン共通テスト模試を年3回に拡充。21年1月からは高1、2年生を対象に学力判定テストもオンラインで年6回実施する計画だ。いずれも21年度中は無料にして、浸透を図るという。アタマプラスの稲田大輔CEOが言う。

「そもそも特定の日に行う1回のテストで生徒の学力を正確に測るのは難しい。テクノロジーを活用すれば、学習の到達度や伸びを定期的に確認したり、データから学習の傾向を把握できるようになる。将来的には、入試に活用される可能性もある」

 模試や入試の風景は今後、大きく変わっていく。(編集部・石臥薫子)

AERA 2020年8月31日号より抜粋