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福岡伸一「その人に免疫があるかどうかを検査することが原理的に難しい理由」

連載「福岡伸一の新・生命探検」

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写真はイメージです(gettyimages)

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福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

 メディアに現れる生物科学用語を生物学者の福岡伸一が毎回一つ取り上げ、その意味や背景を解説していきます。今回は「抗体検査」について取り上げます。

【写真】筆者の福岡伸一さん

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 粘膜に存在するウイルスのRNAを検出したり(いわゆるRT-PCR法)、尿中の絨毛性(じゅうもうせい)ゴナドトロピンを検出したり(妊娠チェッカー)、あるいは黄体形成ホルモンを検出したり(排卵チェッカー)、といった生化学的測定法は、いずれもターゲットとなる分子が単一である。つまり物質の構造が明白である。それゆえ特異性が高い鋭敏な検査が行える。

 PCRの場合なら、ターゲットのRNA配列にピタリと貼り付く相補的DNAプライマーを用意すれば、他のノイズを拾うことはほとんどないし、妊娠チェッカー、排卵チェッカーのような検出キットの場合も、それぞれのホルモン(タンパク質)の構造はヒト個人間で同一なので、特定のアミノ酸配列に結合するモノクローナル抗体さえあれば極めて信頼性の高い測定が可能となる。

 一方、その人に免疫があるかどうかを検査することは原理的に難しい。

 というのも、新型コロナウイルスに感染した経験があり、それに対して特異的な抗体が生産されたとしても、その抗体は個人個人で全くばらばら、分子構造が異なるものであり、しかもウイルスのどのタンパク質に対しても、複数の抗体(ポリクローナル抗体)が生産される可能性があるからだ。つまり、単一ではなく、多様性のあるターゲットを捉える検査はよりハードルが高くなる。

 マクロファージ(外敵を捕捉する免疫細胞)によって分解されたウイルスの抗原情報が、免疫系のB細胞に提示されることによって、抗体の生産が開始されるが、ウイルスのどのタンパク質情報が使われるかは、ほぼ偶然による。ウイルス内部のRNA結合タンパク質が抗原となる場合もある。このような内部タンパク質に抗体が作られても、ウイルスの表面には露出していないので、一次的なウイルス防衛にはそれほど寄与できないと考えられる。ウイルスのスパイクタンパク質やエンベロープタンパク質は、ウイルスの表面にあるので、これに対する抗体ができれば、感染阻止、ウイルス拡散防止に役立つと考えられる。

 抗体検査の原理は、次のようなものだ。


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