宇宙事業を始めてすぐ子どもが生まれた。逆算して人生を小さくまとめない。「やらなくて、後で後悔したくない」
宇宙事業を始めてすぐ子どもが生まれた。逆算して人生を小さくまとめない。「やらなくて、後で後悔したくない」
岡島が覗き込むのは、昨年秋に新設したALEの本社オフィス(東京都港区)の一角に備えられた「真空チャンバー」。宇宙空間を模して容器の内部に真空を作る装置であり、人工衛星開発のための実験が行われる(撮影/岸本 絢)
岡島が覗き込むのは、昨年秋に新設したALEの本社オフィス(東京都港区)の一角に備えられた「真空チャンバー」。宇宙空間を模して容器の内部に真空を作る装置であり、人工衛星開発のための実験が行われる(撮影/岸本 絢)

 人工流れ星を作っている岡島礼奈さん。きっかけは友人と「しし座流星群」を見たときに交わした「流れ星って作れるんじゃない?」という会話だった。中学生のときに読んだホーキングの本で、宇宙に興味を持ち、東京大学で天文学を勉強。理学の博士号も持つ。2011年に会社を立ち上げた。すでに人工の流れ星を光らせることには成功。自分たちが作った流れ星が夜空を彩る日は、もうそこまで来ている。

【写真】宇宙空間を模して容器の内部に真空を作る装置

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 今年3月、新型コロナウイルスの影響で休校中の小中学生に向け、Zoomによる親子イベント「ビジョンのアトリエワークショップ」が開かれた。ゲストとしてビデオ出演した岡島礼奈(41)は、エンブレムが胸に付くジャケットで決めていた。なのに、話しぶりはざっくばらん。親近感が湧く。

「私が『人工流れ星』を思いついた時は、ただの“妄想”でした。去年は(私たちが作った)人工衛星が打ち上がりまして、今それは、宇宙空間で地球の周りを回っています。そろそろ流れ星を流す準備をしているところで。妄想が、だんだん実現に向かっています。(中略)昔に比べると、宇宙は身近なものになっていると思います。皆さんも、宇宙で何がしてみたいか考えてみてください」

 理学の博士号を持つ岡島が率いる「ALE」は、小型の人工衛星を開発して「人工流れ星」を流すことを目指す、宇宙スタートアップ。まず、「流れ星のもと」となる直径約1センチの金属の「粒」を人工衛星に詰め、宇宙で放つ。「粒」が大気圏で燃え尽きる様子を地上から見ると流れ星として楽しめる、というわけだ。様々な色の流れ星ができることが、地上での検証でわかっている。また、「粒」は大気圏で完全に燃え尽き、さらに運用終了後の人工衛星も大気圏に突入させて安全に処理する、エコな設計だ。2023年、夜空をキャンバスにした、世界初の人工流れ星を実現する計画。関東全域に相当する直径200キロメートル圏内で観賞できるという。広域でのカウントダウンイベントも、視野に入れている。

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