羽生結弦/GPファイナル。ネイサン・チェンとの直接対決となったが、40点以上の差をつけられ敗れた。ただ、羽生はフリーで4回転5本の構成で挑み、手応えもつかんだ (c)朝日新聞社
羽生結弦/GPファイナル。ネイサン・チェンとの直接対決となったが、40点以上の差をつけられ敗れた。ただ、羽生はフリーで4回転5本の構成で挑み、手応えもつかんだ (c)朝日新聞社

 羽生結弦の今季の終わりは突然訪れた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、雪辱を果たすはずだったフィギュアスケート世界選手権が中止に。しかし、羽生は来季に向けて既に前を向いているという。

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 フィギュアスケートの世界選手権は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中止になった。平昌五輪で66年ぶりの連覇を達成した羽生結弦(25)にとって、世界選手権はリベンジの舞台となるはずだったが、突然、終止符が打たれた。

 悔しさから今季は始まった。昨年3月、日本であった世界選手権でネイサン・チェン(20)に敗れ2位。羽生はこう語った。

「ショートとフリーをノーミスしても、多分ギリギリで勝てなかったと思う。なので、完全に実力不足。やっぱり、プライドは捨てたくない。得点源になるジャンプをもうちょっと増やさないといけない」

 得点源になるジャンプとは──。羽生は4回転ループの安定に加え、4回転ルッツを積極的に構成に組み込んだ。昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルでは、2017年のGPシリーズロシア杯以来、2年ぶりに4回転ルッツを解禁。チェンに対抗するため、フリーで4回転5本に挑み、冒頭のループ、続くルッツを鮮やかに決めた。出来栄え点(GOE)はループが4.05点、ルッツが3.94点と高得点。ショートでのミスが響き、チェンとは40点差以上の2位だったが、手応えもつかんだ。

「とりあえずループ、ルッツが跳べたということは、点数以上にかなり自分の中では進めたなって感触はあります。大きな一歩だった。(チェンとは)得点ほどの差は感じていない」

 一方、羽生はスケートに対する違和感も口にしていた。

「ジャンプに集中して全部GOEを稼げるようにした方が点数的にはおいしいかもしれない。ただ、やっぱり、何かそれじゃ僕の中でスケートをやる意味になれないんですよね。以前、『ジャンプ大会じゃないんで』って言ったんですけど、今回(GPファイナル)の自分の演技は完全に一生懸命なだけ。ただ、ひたすらにジャンプ大会みたいな感じが自分の中ですごくある」

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