この要因を芳沢教授は、プロセスを無視した「は・じ・き(速さ×時間=距離)」「く・も・わ(元にする量×割合=比べられる量)」式教育と、数学の試験にマークシート式問題がはびこっているからと分析。やり方だけを暗記して答えを当てるので、その図式を忘れると、でたらめな計算をしてしまう大学生も少なくないという。

「数学はプロセスを重視する学問。時間をかけて問題に取り組み、とことん考え抜いたときに、山に登ったような達成感があります。それが数学の面白さ。答えの当て方を覚えさせるだけでは、数学嫌いの問題は解決しません」

 数学だけが大事なわけではない。だが、ITやAI、デジタル教育の基礎となる数学を理解することは、いわゆる「理系」学問のみならず、人文・社会・芸術など、あらゆる学問の可能性を開くことにつながるはずだ。(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年3月23日号より抜粋