「明るくない未来をそれでも生きていくために」 哲学者が伝えるともしびのような言葉とは? (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「明るくない未来をそれでも生きていくために」 哲学者が伝えるともしびのような言葉とは?

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矢内裕子AERA
鷲田清一(わしだ・きよかず)/1949年、京都府生まれ。哲学者。2007~11年大阪大学総長、15~19年京都市立芸術大学理事長・学長を歴任。現在は、せんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。著書、受賞多数(撮影/写真部・掛 祥葉子)

鷲田清一(わしだ・きよかず)/1949年、京都府生まれ。哲学者。2007~11年大阪大学総長、15~19年京都市立芸術大学理事長・学長を歴任。現在は、せんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。著書、受賞多数(撮影/写真部・掛 祥葉子)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

『岐路の前にいる君たちに 鷲田清一 式辞集』は、大阪大学、京都市立芸術大学の入学式・卒業式で、鷲田清一さんが若者たちに贈った17の式辞を収録したもの。不定の時代をいかに生きるべきか、灯火のような言葉たちだ。著者の鷲田さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *
 9年前。東日本大震災が起こった2011年3月も、日本社会はかつてない不安の中にあった。原発事故の収束も見えず、被災地の被害が日々、伝えられる不安の中、当時、大阪大学総長だった鷲田清一さん(70)の式辞が、インターネットで拡散されていた。卒業生に向けた言葉は、多くの人の手から手へ、広がっていった。

「途方もない災害が起こってしまいました」と、その式辞は始まる。身近な人が被災した学生、原発で命がけの作業をしている人たち、被災地で夜を徹して救援、医療活動をしている人々に敬意を表しながら、自分たちに何ができるのかと問いかける内容だった。

「哲学者として書いてきた文章と式辞の言葉はまったく違います。普段は断言することを控える習性を持っているのですが、式辞では明確なメッセージを伝える必要がありました」

 本の第一章は「卒業式の言葉」、第二章が「入学式の言葉」として、大阪大学と京都市立芸術大学での8年分の式辞が収録されている。「問題の根を発見し、解決する力」「芸術の根底にある民主主義の精神」など、学生に限らず、広く読者に訴える内容だ。

「普段の原稿を書いているときに読者の顔は見えません。けれど式辞では、1回きり、反芻できない状態で、目の前にいる学生に言葉を届けなくてはならない。とりわけ卒業式では、学生にとって最後の言葉になるので、毎年、1月になると『今年はなにを話そうか』とそわそわしました」

 大阪大学の卒業生にむけては、「市民としての責任」「社会貢献」「リベラリティ」など、社会の中核を担うリーダーたることを期待した内容が語られている。


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