

アカデミー賞で外国語映画初の作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」。世界を席巻する韓国コンテンツの強さの秘密はどこにあるのか。AERA2020年3月16日号は、ポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホさんに単独インタビューした。
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インタビュールームに現れたポン・ジュノ監督は、自身が表紙のAERA2014年2月3日号を目に留めると、「歴史上もっともイケていない表紙モデルですね」と言って笑った。
格差社会を描き、高い社会性を持ちながら、ユーモア、サスペンス、アクション満載の一級のエンターテインメントで世界中で大ヒットとなった監督作「パラサイト 半地下の家族」。同作は、19年5月のカンヌ国際映画祭で韓国映画初となる最高賞パルムドールを受賞し、今年2月の米アカデミー賞では外国語映画として初めての作品賞を受賞した。自らを“イケてない”と謙遜する監督は、いまや「世界のポン・ジュノ」だ。
「パラサイト」の受賞ラッシュは、幾重にも連なる「壁」を次々と打ち破って成し遂げた。
まず、パルムドールは芸術的な作品に与えられる傾向が強い。それゆえエンターテインメント性が高い同作は、パルムドールを取れないのではないかという下馬評があった。また、外国語映画のアカデミー賞作品賞受賞は、期待されていながら実現してこなかった。
しかし、蓋を開けると1956年の「マーティ」以来、64年ぶりのダブル受賞。「芸術映画」と「エンタメ映画」という作品の壁、そして言葉の壁を越えるということも証明した。
「すでにしっかり分析してくださったので私が何を付け加えるかわからないのですが、ダブル受賞はとてもまれなことです。ただ私たちは賞という目標をもってこの映画を作っていたわけではなく、全スタッフ、キャストがいつもどおり精巧で美しい映画を作ろうと、これまでどおり淡々と撮影しました。そういう映画が認められ、だからこそ嬉しいです」(ポン監督)