「韓国映画の特徴は、官民両方で映画ファンドがたくさんあるということ。ファンドは仕組みがよくできていて、お金がうまく回って韓国映画の製作費を支えています」

 もちろん国の力だけではない。CJエンターテインメントといった映画製作会社の力や、観客の力も大きい。韓国では年間の映画館での鑑賞回数は1人当たり4.3回(日本は1.4回、17年)。映画チケット代の約3%を徴収する「映画発展基金」には、19年は546億ウォン(約48億7千万円)が徴収された。

「政府はあくまで種まきで、それを育てたのは現場にいる自分たちだという自負があると思います」(桑畑さん)

 韓国でタクシーに乗ると、運転手が映画の話をすると李さんは話す。

「韓国にとって映画はただの娯楽ではないとよく言われます。韓国の人にとって映画は鏡。自分たちがいまどこにいて、どういう顔をしているのかを映画館に確認しに来る。だから話題作があるとみんなが観て、議論するんです」

 キャストやスタッフが映画を強くし、観客の熱い反応が映画を育てる。

 ポン監督も、こう言う。

「世界の観客を魅了できたのは、万国共通の言語である俳優の演技、表現があったおかげだと思っています」

(編集部・小柳暁子)

AERA 2020年3月16日号より抜粋