印象的な場面を冒頭に持ってくる(AERA 2020年2月24日号より)
印象的な場面を冒頭に持ってくる(AERA 2020年2月24日号より)

 新卒採用の最初の関門といえるエントリーシート。どう書けば自分の魅力を企業に伝えられるのか悩む学生も多いことだろう。AERA2020年2月24日号では、エントリーシートの書き方の基本をレクチャーする。

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 学生たちはエントリーシート(ES)に対してどんな不安を抱いているのか。就活状況の調査・研究を続けている法政大学キャリアデザイン学部の梅崎修教授の協力を得て、授業でアンケートすると、こんな答えが返ってきた。

「長文の書き方がわからない」「伝えたいことをうまく文章にできない」「素の自分の見せ方がわからない」「どんな経験が企業の人にプラスに響くのか」「どうしたらオリジナリティーが出せるのか」──。

 課される400文字程度の文章でも、日常的に長文を書きつけていない学生にとっては、「書き方もわからないもの」。筆者は梅崎教授のゼミで、基本的なESの書き方をこう指導した。

(1)総論、べき論、理想論を書くよりも、自分自身の体験を自分の言葉で書く。ブレークする前の木村拓哉は、萩本欽一の番組のオーディションで「好きな食べ物は?」という質問に「お母さんのお稲荷さん」と答えて合格した。「カレー」とか「お寿司」ではなく「お母さんの~」という思いのこもった言葉を萩本は評価した。「自分にしか語れない体験」を冒頭に書く。

(2)一番印象的なエピソードから書き出す。それを「映像が見える」ように書く。テレビの俳句番組でも言われるが、映像が見える文章は記憶に残る。「友だちを励ましました」と書くよりも、「私の言葉に対して○○さんは『ありがとう、もう一度がんばる』と真剣な表情で語ってくれた」と書いた方が映像が見えて臨場感がある。

(3)なるべく短文で。一文にはメッセージを一つだけ。原則的に60文字を超えたら句点で区切る。語尾に思いがこもるように書く。「~したいと思います」と書くより、「~します」「~になります」と断定調で決意を込める。

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