世間では婚活が当たり前になって久しく、多くの女性は、王子様は待っていても現れないことを知っている。凍りついた心を解かすのに必要なのは、王子様の愛より家族の愛のほうがよほど現実的なのだ。

 バック監督と共同監督を務めたジェニファー・リー監督は、ヒット要因のひとつに「姉妹の愛と恐怖心を掘り下げたことに意味があった」と考えている。

「例えば、エルサの(制御不能な力を持ってしまった自分への)恐怖心を掘り下げることは、今までのアニメ作品では見たことがないと思いました。それに、彼女たちは勇気があるだけでなく、短所もあって完璧ではない。リアルなんです。そんな女性像は見る人のインスピレーションにもなると思いました」

 結果、「アナ雪」は大人の女性までもが自分を重ねられるリアルな物語になった。

 続編は、「ハッピーエンドだけが人生ではないと疑問を投げかけるところから始まった」と前出のデル・ヴェッコ氏は言う。

 物語は、エルサが再び城門を閉じることはないと約束した3年後から始まる。アレンデール王国でクリストフやオラフとともに平穏で幸せな日々を過ごしていたエルサとアナだが、エルサだけが不思議な歌声を聞くようになる。その声に導かれ、エルサはアナとクリストフ、オラフらとともに旅に出ることに。一行はエルサの魔法の力の秘密を解き明かすため、数々の試練に立ち向かうことになる……。

 2作目の大きなテーマはキャラクターたちの「変化」であり、「進化」という。エルサとアナはそれぞれより活発になり、アクションシーンも多い。各人の思いが歌でつづられ、ミュージカル色もより強く感じられる。

 前作では、「ありのままで」いられる氷の城を築いたエルサが、自らを閉ざして孤立する。今作では、アナの愛によって孤独である必要がなくなったことで、テーマ曲の通り「未知の世界へ」向けて、能動的な活躍を見せる。エルサが海岸で何度荒波にのまれても諦めず、水の精霊である馬のノックを自在に操るようになる姿は必見。女性の内にある男性性がたくましくも美しく描かれ、ほれぼれする。

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