ティファニー(撮影/写真部・高野楓菜)
ティファニー(撮影/写真部・高野楓菜)
LVMHグループの主なブランド(AERA 2019年11月11日号より)
LVMHグループの主なブランド(AERA 2019年11月11日号より)

 仏ルイ・ヴィトンのグループが、米ティファニーの買収に乗り出した。米国最高峰のブランドだけに、合意に至るまでは激しい駆け引きがありそうだ。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

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 「ルイ・ヴィトン」を中核に70超のハイブランドを抱えるファッションビジネスの王者、仏モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が、米国を代表する宝飾ブランド、ティファニーの買収に乗り出した。合併・買収(M&A)を重ねて「ブランド帝国」を築いたLVMHだが、今回の求婚相手はこれまでとは別格だ。

 ブルームバーグ通信による「買収提案」のスクープが飛び出したのは10月26日土曜日。LVMHは週明け28日に「ティファニーとの取引について初期的な協議を持ったことを確認する」と報道を事実上認めた。

 対照的だったのは同じ日のティファニーの声明だ。「1株120ドルで買収提案を受けた」と買収金額を明らかにしつつ、「協議に入ったわけではない」ともクギを刺した。安売りするつもりはない──。高級ブランドらしいプライドがにじんだ。

 ファッション・革製品から時計、洋酒まで、LVMHが買収を重ねてきたブランド群は壮観の一言だ。「帝国」の盟主であるベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)は、米誌フォーブスの推定で資産約1千億ドル(約11兆円)。欧州一の富豪として知られる。

 そのアルノー氏をしても、提案額で約145億ドル(約1兆5800億円)をつぎ込むティファニー買収は、これまでで最大の賭けになる。第一の狙いは、世界で毎年8%ずつ市場が拡大しているとされる宝飾品ビジネスのテコ入れだ。

 LVMHはイタリアの高級宝飾ブランド「ブルガリ」を2011年に傘下に収めて成長軌道に乗せたものの、ライバルの「カルティエ」ほどはもうかっていない。グループの中で宝飾・時計部門の売り上げは1割に満たない。婚約指輪の代名詞のように語られるティファニーをラインアップに加えれば、宝飾部門を主力の革製品に次ぐ柱にでき、「帝国」はより盤石になる。

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