「エターナルノート」はエンディングノートのようなイメージで、「自分史」「やり残しリスト」「大切な人へのメッセージ」「未来のプランニング」からなる。

「やり残しリストは、人生最後に書くとかえって後悔につながることも。でも40代ならやることリストになるんです。また、大切な人へのメッセージを書くことで、一回自分の中で心がフラットになっていき、どんな未来を歩んでいきたいのかが見えてくる。それで未来をプランニングしていく。一度立ち止まることによって、自分がこういう生き方がしたいということがわかります」

 エンディング情報は、どんな介護や葬儀をしてほしいかという情報だ。

「そういう情報は状況がせっぱつまってくると話題にしにくいんです。財産情報の整理は毎年やっていると自分の資産の増減がわかります」

 生前整理は死ぬための準備ではなく、最後の一秒まで生ききるためのもの。大津さんは階段の踊り場をイメージして、「踊り場法」という名前をつけている。この人生の棚卸しには、五つの力が必要になるという。「決断力」「判断力」「分別力」「管理力」「体力」だ。ただ、生前整理にも“リバウンド”がある。早く作っても情報のアップデートは必須だ。

 そんな大津さんが強調するのが、最後の整理項目だ。

「デジタル情報です。今後、よりデジタル情報の整理が必要になってくると思います」

 不明だったネット銀行口座発見による遺産相続問題、パソコンからの個人情報流出……。死後にこんなトラブルが起こるかもしれないなんて、考えるだけでも恐ろしい。デジタル遺品整理を手がけるマレリークの近藤博之社長(43)はこう言う。

「お客様のご要望で一番多いのはパソコンのパスワードロック解除です」

 しかし、スマートフォンのパスワード解除は、至難の業だ。

「デジタル生前整理の中では、スマホのパスワードを紙に書いておくのがとにかく間違いなく一番大事なことです」(近藤社長)

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