稲垣えみ子「この低成長時代、議員ってものすごーく無力なんじゃないだろうか?」
連載「アフロ画報」
元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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統一地方選挙という単語を新聞社に入社するまで全く知らず、最初に配属された支局で先輩に散々叱られた。「選挙は民主主義の根幹である。それを知らずして新聞記者になったのかオマエは!」と。全くその通りで、私は民主主義などというものを全然わかっていなかった。えらく場違いなところへ来てしまったと縮み上がった。
……などと過去形で書いているが、じゃあ今は分かっているのかというと、いまだにわからないのである。
ということを、先日行われた統一地方選挙で痛感する。
会社を辞めると地元にリアルに関心が湧く。何しろここが私の家であり仕事場であり仲間のいる場所である。地元が良くならなければ私も良くならぬ。というわけで、我が地元の区議選ににわかに関心を抱く。
だがしかし。真剣に関心を持ってみれば、全てが謎であった。いくつか列挙する。
・ほぼ全ての候補者が「子育て支援の充実」「高齢者が安心して住める街」などと公約している。なら現実はとっくにそうなってるはずなのになぜそうなっていないのか。
・何かを建てた、整備したなどと実績を挙げる人がいるが、原資はその方の資金ではなく我らの税金である。つまりは、今や財源は限られているのである。そこにお金を使えば他のことが削られたはずなのである。それは何なのか? それはいいんだろうか?
・そもそも選挙カーで名前を連呼する選挙運動がわからない。4年も任期があり、その間に区民の助けになることを積み上げていれば、次もお願いしますと自然に当選するのではないでしょうか。「普段(4年間)勉強サボってましたけど一夜漬けでテスト乗り切りたいんでヨロシク!」と自ら宣言しているようにも見えてしまうんだが……。
といろいろ考えてフト思う。この低成長時代、もしかして議員ってものすごーく無力なんじゃないだろうか。
ちなみに投票はした。投票だけじゃ何も変わらん。そう思いながら投票した。良い経験であった。
※AERA 2019年5月13日号
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
