手にテヅルモヅルの標本を持つ。岡西さんには年間30万円程度の研究費はあるが、学会に参加するための交通費などですぐになくなる。標本の保存に使うエタノールも高額だ(撮影/編集部・澤田晃宏)
手にテヅルモヅルの標本を持つ。岡西さんには年間30万円程度の研究費はあるが、学会に参加するための交通費などですぐになくなる。標本の保存に使うエタノールも高額だ(撮影/編集部・澤田晃宏)

 国から研究所への運営費交付金の削減などに代わって、期待されている寄付収入。研究費も寄付で集める時代が来ている。

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「テヅルモヅル」というクモヒトデ類の深海生物がいる。大昔にフィリピンで食べられていたという記録はあるが、一般に食用ではない。漁師からすれば、網に引っかかって邪魔な嫌われ者。腕はいくつにも分かれ、見た目もグロテスクだ。

 クモヒトデ類の研究者は世界でも数十人しかいない。東京大学三崎臨海実験所(神奈川県三浦市)特任助教の岡西政典さん(35)はその一人だ。岡西さんの専門は系統分類学。テヅルモヅルの分類を進めたいが、

「見た目や動きに派手さもなく、社会に直接的な利益を与える可能性も未知な生物の、そのまた分類などの基礎的な研究に予算は期待できません」(岡西さん)

 そんな岡西さんが頼ったのが、クラウドファンディング(以下CF)だ。CFは群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。実行者は計画や夢と目標額、達成した場合のモノやサービスなどのリターンの情報をCFサイトから発信し、資金面での支援者を見つける。目標額を達成すれば支援者にリターンを送り、目標額の10~20%程度(サイトにより異なる)の手数料をCFサイトに支払い、寄付を受け取る。

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