小惑星表面に人工的に作ったクレーターに、ピンポイント着陸するはやぶさ2のイメージ図(写真:JAXA/池下章裕氏提供)
小惑星表面に人工的に作ったクレーターに、ピンポイント着陸するはやぶさ2のイメージ図(写真:JAXA/池下章裕氏提供)

 ソ連(当時)を筆頭に、米・露・中など、各国が力を入れて取り組んできた宇宙探査技術の研究。宇宙飛行士で宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事の若田光一氏によると、ソ連が世界初の有人宇宙飛行に成功した1961年以降、約20年周期で発展してきたという。

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 その延長線上で突入する20年代は「地球低軌道からその先へ」(若田氏)を合言葉に「深宇宙開拓」の時代となり、月や火星で滞在型有人探査に向けた国際協力が加速している。

 安定的な利用が定着した地球低軌道では、民間による商業活用を推奨し、経済活動の場としていくという。「この流れで行くと、40年代には月面の滞在拠点の構築まで構想が描けるのではないかと考えている」と若田氏は語る。

 シンポジウムでは、日本の宇宙探査技術の高さを世界に見せつけた2月22日の無人探査機「はやぶさ2」による小惑星「リュウグウ」へのピンポイント着陸が話題になった。

「はやぶさ2の成功には完全に魅了された。小惑星へのピンポイント着陸は見事としか言いようがない。これからの宇宙探査に向け、欧州だけではなく、世界全体を鼓舞した」

 欧州宇宙機関(ESA)の対外関係部門トップ、フレデリック・ノルドルンド氏は講演で、開口一番、JAXAの偉業をたたえると、こう続けた。

「今の国際宇宙探査では、極めて明確で正確な焦点が置かれた目的を共有し、一緒に前進するための計画が設定されている。我々は非常にエキサイティングな時間を送っている」

 各国が太陽系のあちこちで進める宇宙探査。そこで培った技術を結集して、人類の活動領域を地球外に広げるミッションに協力して取り組む。冷戦時代を経て始まった宇宙探査の国際協力が深化した末の「オール人類」で臨む新時代の幕開けを、ノルドルンド氏は強調したのだ。

 ピンポイント着陸を成功させたはやぶさ2は、衝突装置を爆発させて人工クレーターをつくり、リュウグウの砂や石を採取するという困難な任務を通じ、日本の宇宙技術を実証していく。世界の関心が集まるのは、こうした高い技術が今後の月や火星の探査に不可欠だからだ。

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