三宅:身の引き締まる思いです。僕は「滝沢歌舞伎」には出演したことがありますが、お芝居をしたわけではありませんので、プレッシャーですよ。

海老蔵:三宅さんは多分、「どうすれば心が変化することを表現できるのか」と考えてしまうと思うのですが、それは必要ありませんよ。そこはこちら側が作る世界に三宅さんが居ることによって、見えるようにしたいなと思っていますので。舞台に居るということが大切なのです。

三宅:エゴイズムは人間誰しも持っているものです。欲はそれが行き過ぎることでおかしな方向に落ちていく。でも、ある程度の欲やエゴを持っていないと人は生きていけないのかなとも思います。

海老蔵:そうですね。大体、人間は存在そのものがエゴですよね? 自分たちが愚かであることにあまり気づかずに過ごした結果が今ですから。

三宅:今の僕の欲は「ドラえもん」のアンキパンがほしいです。そして、寝て起きたら海老蔵さんが乗り移っているみたいなことが起こってほしいですね(笑)。

海老蔵:私も同じようなことで言うと、何を食べても運動しなくても、怠惰に生きても壊れない体がほしいな。そうはいかないから食事制限も我慢もしなくてはいけないのですが。話は変わりますが、三宅さんはそもそも古典芸能に興味はおありでしたか。

三宅:祖父が時代劇好きなんです。子どもの頃、お正月に祖父の家に行くと、大体特番の時代劇が流れていてそれを必ず見ていました。あと大河ドラマも。そんなこともあって、子どもの頃から時代劇に興味があったんです。「遠山の金さん」や「水戸黄門」はよく見ていました。夕方の再放送で流れていた「水戸黄門」を見るために、学校からダッシュして家に帰ってきたくらいです。

海老蔵:それはすごい(笑)。

三宅:歌舞伎はその流れで祖父に連れられて見に行くことがあったので、馴染みがあります。見に行けば必ずイヤホンガイドを借ります。セリフだけでは説明されていないことがイヤホンガイドでたくさん説明されている。歌舞伎は内容が凝縮されたもの。それをお客様に伝えるというのは姿形だけではなく、そこに立っている役者さんから放たれるものが重要なんだろうと思っています。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年3月4日号より抜粋

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