「(現実は)『何もしなかった日本』と比べても、もっと何もしなかった日本です」

 実は『平成三十年』には続編『団塊の後』がある。舞台は団塊の世代がリタイアした後の2026年の日本。47歳と若い首相の徳永好伸が掲げるのが「身の丈の国」だ。外国と富を競わず、日本自身の幸せを追求する。年の若い首相について堺屋さんは「だいたい、小泉進次郎さんと同年齢」と話していた。

 同作品のサブタイトルは「三度目の日本」。堺屋さんは政治への期待をこう話していた。

「一言で言えば『低欲社会』を解消することです。要するに面白い社会を作る。面白い社会というのは、意外性と多様性に満ちた社会です。強い日本を目指した第1の日本は明治維新から1945年の敗戦で終わりました。戦後、第2の日本の正義は『安全と平等と効率』でした。しかし、平等と安全が過ぎると、冒険心が生まれない低欲社会になり、世の中から意外性と多様性が消えてしまいます。日本の官僚は2年程度でポストが変わる仕組みなので、長期的な視野を持って問題を考えられない。政治家がビジョンを持って『第3の日本』を語っていく必要があります」

 堺屋さんは終始、柔和な表情を浮かべる一方、よどみなく出る言葉にはすべて力が込められていた。(AERA編集部・澤田晃宏)

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