『昭和史』の著者・半藤一利が、最新作で「次世代の覚悟を問う」

AERA
 昭和史研究の第一人者で『昭和史』を著した半藤一利さんの新作ノンフィクション『語り継ぐこの国のかたち』には、新しい時代を迎える私たちが、いま振り返って学びたい貴重な歴史のヒントが満載だ。半藤さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *
 御年88歳。近現代史の底流を洞察し昭和史研究の第一人者として知られる半藤一利さんが、「この国のかたち」の思索を凝縮させた一書だ。

「ずいぶん前に書いた原稿もありますけど、読み返してみると、そのころから同じようなことを言ってたんですね」

 と笑う。若い編集者の力を借り、眠っていた原稿の中から「これは」と思うものを選びだし、まとめたのだという。

 明治という時代をひもとき、戦争の中の天皇を見つめ、近代日本の失敗の系譜をたどり、日本を暴走させた人たちを記した。通底するのは<いまの社会風潮や政治にたいする憂慮と危惧>と書いた。半藤さんの目には、今の日本は太平洋戦争へと突き進んだ時代と二重写しに見える。

「安倍政権は集団的自衛権の行使について、憲法を変えず閣議決定で容認しました。あれはヒトラーがやったのと同じこと。ヒトラーは国会決議を経ない閣議決定で大統領緊急令を発令させ、ワイマール憲法を空洞化し、幾つかの法を一束にしてまとめて変え、国民の自由を制限しました」

 今の日本はどうか。一見、平和に見えるが、自民党は緊急事態条項を憲法改正草案に盛り込んだ。緊急事態条項は、大規模災害時に政府が国民の生命や財産を保護できるようにするものといわれる。だが、半藤さんは、狙いは集団的自衛権を活用するためのものと話す。

「なのに国民は何も声を上げない。この国のかたちが変わっていくことに国民は鈍感すぎるんじゃないかと思うんです」

 歴史は繰り返す。だが、二度と過ちの歴史を繰り返さないためには「歴史を学ぶ」ことが大切だと力を込める。歴史に学ぶのでなく、歴史を学ぶのだ、と。

 例えば、1939(昭和14)年に満州国(現中国東北部)で旧日本軍が旧ソ連軍と武力衝突したノモンハン事件。日本は敵の戦力を過小評価し主力部隊の8割を失う。だがその教訓は全く生かされることなく、日本軍は精神力のみを頼みとして太平洋戦争に突入し、敗北する。

続きを読む

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック