フェアは全国の約1300の書店で開催中。座談会に登場した4社のほか、幻冬舎、講談社、小学館、新潮社、筑摩書房、中央公論新社、徳間書店、双葉社、文藝春秋(50音順)が参加している(撮影/写真部・片山菜緒子、撮影協力/紀伊國屋書店新宿本店)
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それぞれのおすすめの文庫を前に、(後列左から)早川書房の塩澤快浩さん、KADOKAWAの吉良浩一さん、(前列左から)光文社の小口稔さん、朝日新聞出版の長田匡司(撮影/写真部・大野洋介)

 朝日文庫40周年を記念して、13社の出版社の文庫編集長のおすすめ本を集めたフェアを全国の書店で開催中。角川文庫、光文社文庫、ハヤカワ文庫、朝日文庫の編集長ら4人が文庫について語り合った。

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長田(朝日文庫):出版社の垣根を越えて、文庫編集長におすすめの朝日文庫を選んでもらい、私も各社の文庫から1冊ずつ選ばせてもらいました。

吉良(角川文庫):書店員さん、書評家や作家の方の推薦文は今までもありますが、編集者、編集長の声を出す機会はあまりない。しかも他社の本を推薦するのは僕も初めてです。

塩澤(ハヤカワ文庫):作り手がすすめるのも面白い。でも、僕は厳密には編集長ではないんですよ。早川書房では翻訳ものと国内ものに編集部が分かれていて、僕は文庫、単行本をあわせた国内部門を統括しています。

──塩澤さんは朝日文庫で本多勝一『<新版>日本語の作文技術』を選んでいますね。

塩澤:本多さんは長野県飯田高校の大先輩なんですけど、実はこれまで未読で、この機会に読んで選びました。観念的ではなく、すごくシンプルでわかりやすい。自分がやってきたことは、間違っていなかったなと(笑)。

吉良:朝日文庫の代名詞みたいな一冊ですね。全然古びないし、ロジカルで実践的。僕は高校の先生に薦められて読みました。

長田:ずっと売れ続けていたのですが、2015年に活字を大きくして新版にしたら、年間1万冊以上、売れるようになりました。朝日文庫の中では常にベスト10に入っています。

──小口さんは、横山秀夫『震度0』を選んでいます。

小口(光文社文庫):私は以前、横山さんの担当をしていたんです。警察小説の王道を行く作品を書き続けている方なので、最新作の刊行を待っている間に、ぜひ読んでほしいと思います。

──吉良さんが選ばれたのは、内澤旬子『捨てる女』です。

吉良:内澤さんは自ら豚を飼って食したり、身体を通して実践したことを作品に収斂(しゅうれん)させています。そのスタイルには、ずっと注目していました。このエッセーには、内澤さんの潔さが象徴的に表れています。

塩澤:長田さんは角川文庫から柚月裕子『孤狼の血』を選ばれていますね。

長田:映画「仁義なき戦い」が好きなものですから、柚月さんがリスペクトして書かれていることが、ひしひしと伝わってきました。ラストが衝撃的です。(文中一部敬称略)

(構成/ライター・仲宇佐ゆり)

AERA 2018年12月24日号より抜粋

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