長戸勇人(ながと・はやと)/1965年、京都市生まれ。クイズ作家。大学在学中の89年、「アメリカ横断ウルトラクイズ」優勝。著書に『クイズは創造力』ほか(撮影/編集部・小柳暁子)
長戸勇人(ながと・はやと)/1965年、京都市生まれ。クイズ作家。大学在学中の89年、「アメリカ横断ウルトラクイズ」優勝。著書に『クイズは創造力』ほか(撮影/編集部・小柳暁子)

 クイズ界は新しい局面を迎えている。テレビを通して楽しむものから、直接観戦するものとして定着しつつあるのだ。クイズ界のさらなる発展に必要なもの、そしてクイズの魅力とは? 「第13回アメリカ横断ウルトラクイズ」優勝者でクイズ作家の長戸勇人さんが語る。

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 クイズを観戦する文化はようやく定着しそうですね。90年代初頭のクイズ王ブームの時代に、純粋に応援だけする観客が登場しました。クイズ王番組が終わり下火になりましたが、ここにきて伊沢拓司君や水上颯君のおかげで新しい展開が一気に出てきて、とてもうれしいです。彼らとは世代は違いますが、クイズに対しての違いは全く感じない。以前伊沢君と対戦したんですが、むちゃくちゃ面白かったし、楽しかったです。

 文化の成熟には観客が必要です。野球でも相撲でも、成熟した文化はやる側と観る側が完全に分かれている。野球が日本で定着した理由の一つに、語れるからというのがあると思います。ルールが熟知されており、子どもの頃からプレーを観ていて分かるきっかけがいっぱいある。クイズも、一大会のわずか1問、1問の中の1文字のずれで勝敗が決まったりします。その1文字でボタンを押すためには、プレーヤーによって押す背景、押さない背景がそれぞれあるのですが、あまりにマニアックすぎて誰も表現しないし、表現しても伝わらない。クイズにおいては、そこのピースが熟しきっていないんです。本当はみんなが思っている以上に、面白いんですよ。

 クイズとは知識の詰め込みではなく、出すことが主なんです。メンタルも作用する。僕の著書『クイズは創造力』には理論篇、問題集篇の他に応用篇があります。当初出版社からの打診は心理篇でしたが、断りました。面白すぎるので、当時はそれを出すのは嫌だったんです(笑)。いまその一部を、ウェブサイトのコラムで書いています。(談)

※AERA 2018年11月26日号