竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
新商品の試食会では「お客さまの視点を大事に」と、繰り返し伝えています
新商品の試食会では「お客さまの視点を大事に」と、繰り返し伝えています

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

【写真】新商品試食会の様子はこちら】

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 ローソンでは小さなものを含めると毎週2回は新商品の試食会があり、商品化前の「最終ジャッジ」が行われます。私もすべて試食して、市場に投入するかどうか判断をします。試食会で何を見て評価し、ゴーサインを出すのか。また、作り直しをしてもらうのか。そこには、私なりの判断基準があります。

 最も重要視するのは、MD(商品企画担当者)の熱意と自信です。どれだけ市場を研究し、足を使って食べ比べ、商品として落とし込む努力をしたか。それをやり切ったMDは、私の質問や疑問点に対する受け答えも揺るぎない。自信に満ちあふれています。逆に妥協や迷いがあると、それは態度となって表れます。担当者の熱意と自信に裏打ちされた商品は、必然的に完成度が高いものになります。

 とはいえ、勢いだけが前面に出ているものはもちろんダメです。パッケージについても指摘します。「食べてもらえればわかります!」と熱弁するMDもいますが、そこには「お客さまの視点」が欠けてしまっている。勢いはあるが周りが見えなくなっている場合は、お客さまの立場に立ってストーリーをもう一度練り直してみよう、と差し戻すこともあります。

 試食する際は、気になる商品は完食します。空腹時の1口目は何を食べてもおいしい。でも、食べ終えた後に「また食べたい」と思えるものこそ、もう一度買いたいと思って頂ける商品。完食したときに、例えば残りの3割が重すぎないか、または物足りなくないか、などをチェックします。

 とりあえず出してみました、という商品はまず売れません。「絶対にヒットする」とMDが確信している商品の中で、予測以上に売れるものが5割。打率5割以上なら上々です。発売までは、すべてが「仮説」でしかない。売り上げを真摯に受け止めて、改良努力を重ねていく。過去の大ヒット商品もすべて同じでした。どんな商品も「ヒットに近道なし」です。

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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