SVFは設立から1年余りで約30社に投資した。コミュニティー型ワークスペースの米「We Work(ウィーワーク)」を始め、不動産や医療、ロボットなど「その分野の世界ナンバーワンの会社ばかり」(孫氏)。配車サービスのウーバー、米自動車大手ゼネラル・モーターズ傘下で自動運転を手がけるGMクルーズなど、形の上ではソフトバンクが出資している一部企業の株も、今後はSVFへ移す方針だ。

 ソフトバンクの主力事業は、もはや「通信」ではなく「投資」だ。18年4~6月期の営業利益7150億円のうち、33.5%にあたる2399億円はSVFが稼いだもの。前年比2.3倍という急成長ぶりで、国内通信事業の営業利益(2218億円)を上回った。

 事件が起きる前の8月、孫氏は会見で「AIがらみのところに私の時間と頭の97%を体重移動した。それがSVFという形でAIに取り組むことだ」と語り、携帯電話から投資へと事業の重点を移したことを強調。SVFの第2弾を設立する意向も明らかにした。だが、頼りのサウジマネーは今や、投資活動の障害にもなる両刃の剣だ。

 市場は、ソフトバンクの危機を敏感に感じ取っている。ソフトバンク株は事件発覚から10月25日までに18%下落。日経平均株価も米中摩擦などを受けて9%下げたが、その2倍の下げ幅だ。

 時価総額約10兆円で国内企業4位(25日現在)まで巨大化したソフトバンク。「サウジショック」を乗り越えて成長を続けられるか、大きな試練となりそうだ。(朝日新聞経済部・生田大介)

※AERA 2018年11月5日号