東京駅周辺では、現在複数の大規模再開発が進行中だ。常盤橋地区の再開発で、2027年には日本一の高さを誇るビルが誕生する。東京駅周辺で働く人はさらに増えるだろう。

「今後、京浜東北線のような東京駅へのアクセスがいい路線が今よりも評価されるのではないかと思います」(同)

 長年、常識とされてきた都内不動産の「西高東低」傾向が変化するかもしれない。

 物件価格にこだわるあまり、暮らしの質を左右する環境をなおざりにしては本末転倒。価格と住み心地のバランスを見るうえで参考にしたいのが、23区の「医療環境」「安全度」「買い物利便性」「自然」をそれぞれランキング化したものだ。

「オフィスや商業施設が並ぶ都心部は多くの企業が集積していて区の予算が潤沢です。そのため行政サービスも充実。特に千代田区、中央区、港区の都心3区は、医療環境も安全性も良好です」(池本さん)

 財政的に安定している区=行政サービスの質が高いという構図。しかし実際に住めるかとなると、それはまた別の話か?

「千代田区はオフィス街で住民数が少なく、人口密度が低い。そのためこうしたランキングで上位になりやすい。ただ新築分譲マンションは1億円以上が珍しくありません」(栗林さん)

 そんな都心3区での狙い目エリアはあるのか。

「中央区晴海のような湾岸部です。東京五輪に向けて商業施設やクリニックモール、保育所などの建設が進んでいます。臨海部では地下鉄新線で都心部へ結ぶ構想があり、実現すれば交通アクセスが改善されます。伸びしろのあるエリアですね」

 自然の多さや買い物利便性に注目すると、都心3区とは対照的な、台東区、墨田区、江戸川区、足立区といった下町エリアが上位にランクイン。

「江戸川区には葛西臨海公園をはじめ、親水公園が複数あり、とにかく緑が多い印象」(同)

 4社5路線が乗り入れ、通勤に便利なターミナル駅として人気化したのが足立区の北千住。駅前は学生の姿も目立ち、今やちょっとした文教都市の様相。

「足立区では大学の都心回帰にあわせて積極的な大学誘致を行い、複数の大学がキャンパスを設置、若者の流入が街の活性化につながっています」(同)

 足立区では大学誘致以外にも材料がある。現在、北千住駅西口では三菱地所の再開発が進行中。下町風景だった木密(木造住宅密集地域)問題が解消されると、防災面でプラスに。

 価格プラスアルファの物件選びが、マイホーム購入成功のポイント。どこを譲ってどこにこだわるか、メリハリが肝心だ。(経済ジャーナリスト・堀切利英)

AERA 2018年10月22日号