樹木希林(きき・きりん)/1943年、東京都生まれ。61年、文学座に入り「悠木千帆」名義で女優活動スタート。64年、森繁久彌主演ドラマ「七人の孫」で一躍人気を博す。近年は映画に軸を移し、高い評価を得る。2008年、紫綬褒章、14年、旭日小綬章(撮影/植田真紗美)
樹木希林(きき・きりん)/1943年、東京都生まれ。61年、文学座に入り「悠木千帆」名義で女優活動スタート。64年、森繁久彌主演ドラマ「七人の孫」で一躍人気を博す。近年は映画に軸を移し、高い評価を得る。2008年、紫綬褒章、14年、旭日小綬章(撮影/植田真紗美)
「万引き家族」 カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。樹木さん演じる祖母・初枝の年金と万引きで暮らす6人。底辺を這う生活だが、なぜか笑いが絶えない家族の、その絆を問う。(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro. 配給:ギャガ
「万引き家族」 カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。樹木さん演じる祖母・初枝の年金と万引きで暮らす6人。底辺を這う生活だが、なぜか笑いが絶えない家族の、その絆を問う。(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro. 配給:ギャガ
「モリのいる場所」 「仙人」と呼ばれた画家・熊谷守一と樹木さん演じる妻・秀子の物語。お茶の間に集う人々との間で繰り広げられる笑いと夫婦愛にほろりとさせられる。(c)2017「モリのいる場所」製作委員会
「モリのいる場所」 「仙人」と呼ばれた画家・熊谷守一と樹木さん演じる妻・秀子の物語。お茶の間に集う人々との間で繰り広げられる笑いと夫婦愛にほろりとさせられる。(c)2017「モリのいる場所」製作委員会

 5年前に全身のがんであることを公表しながらも多くの映画、ドラマで活躍していた俳優の樹木希林(きき・きりん/本名は内田啓子)さんが9月15日、都内の自宅で亡くなっていたことわかった。享年75歳。夫はロックミュージシャンの内田裕也さん(78)で、長女は内田也哉子(42)さん、その夫は俳優の本木雅弘(52)さん。

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 樹木さんは8月13日に左大腿(だいたい)骨を骨折し入院したが、最期は家族に看取られながら自宅で息を引き取ったという。

 個性派で知られ、最近ではカンヌ国際映画祭パルムドール受賞の「万引き家族」や「モリのいる場所」に立て続けに出演し、樹木さんのリアルな演技に多くの人が圧倒された。いかに「人間」「日常」を描くのか。樹木さんが今年6月、縦横無尽に語った貴重なインタビューを再録する。

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「女優がそんなことをするのは、ヌードになるより恥ずかしいことですよ」って人に言われた。入れ歯をはずしたのよ。映画「万引き家族」で。髪の毛もだらぁと長くして、気味悪いおばあさんでしょう?

 自分の顔に飽きたの。是枝(裕和)監督の作品に出るのも、これが最後だと思ったから提案したわけ。私ももう後期高齢者で、店じまいを考えないといけない時期ですから。

 それに、人間が老いていく、壊れていく姿というのも見せたかった。高齢者と生活する人も少なくなって、いまはそういうのをみんな知らないでしょう? 映画のなかで、みかんにかぶりつく姿がすごいと言う人もいるけれど、実を歯ぐきでしごいたの。歯がないって、そういうことなのよ。

 雷が落ちた話も本当よ。カンヌに向かう途中の飛行機でね。離陸して間もなくだった。ドッギャーンってすさまじい音がして、私の座席の上の(内壁の)天井が破れて、破片やらなにやら色々落ちてきた。黄色い酸素マスクが三つユラユラ揺れて、まるでくす玉が割れたみたいだった。

 カンヌに着いて「飛行機でくす玉が割れちゃったから、カンヌでの賞はもうないと思うわ」って言ったら、「やめてくださいよぉ」ってみんなに嫌がられたわね。そうしたら、逆だった。あれは、パルムドール受賞の、前奏のファンファーレだったわけよね。

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